日本の農業の実態
田原総一朗氏のPodCastにて専業農業の方々に対して講演をした際に色々勉強させられたとのことで、真の実態を述べていた。
この実態はもっと流布すべきとのことで、以下に要点だけ書いておく。
まず“農業従事者”は200万人いる。
そのうち、“農業の方が収入が多い兼業農家”は40万人いる。
専業農業の人はそのうち14万人。
では40万-14万=26万人はどういう人かというと、元は兼業農家で定年退職をした為に(給与が無くなるから)結果として農業収入の方が多くなったような人が殆どだという。
160万人の兼業農家はたいがいが休日のみ農業を行うだけで、自分の家族や親戚知人に配ることが主目的で若干を出荷に回す程度しか作っていない場合が多いということのようだ。
これは心当たりのある(こういう親戚縁者知人がいる)人も多かろう。
私自身ももいくらでも心当たりがある。
例えば昔は専業だったが大分年を取ってつらくなったので田畑を売って比較的街中に引っ越し、家庭菜園程度だけ借りて世話が楽な農作物だけやっている親戚がいる。
それでも年金暮らしだから農業収入の方が多いわけだ。
考えてみれば普通の会社に勤務していて“農作業があるから休む”なんていかに農業がさかんな地域であっても無理だろう。連休なり、せいぜい有給をうまくつかってなんとかやりくりをするのが通常となるわけで、それで農業の方が収入が多いわけが無い。
つまり我々一般のスーパー等で食料を買ってくる人間にとっては、専業の14万人の動向が重要になるわけだ。
農業従事者の高年齢化が進んでいると言うが、この数値は200万人の平均を取っただけのことでそこが農水省の“まやかし”であるということ。
専業以外の“後継者”などそもそも存在しないわけでそれがどんどん高齢化していっても不思議でもないしさほどの問題すら無い。
田原氏が言うには重要な専業の14万人はせいぜい50代くらいが平均では無いかという。
講演に来た人達はその程度で40代の人もいたという。
年収1000万を超える農業者とのことでかなり大規模で軌道に乗っている人達だろうからそうそう若い人はいないだろう。
なんにせよ専業の平均年齢をきちんと発表していないのが“あやしい”とみるのは妥当な見方だろう。
また、農水省のひとたちの人員について触れていた。
昔は農業従事者は1000万人いたとのことで現在は200万。つまり8割減っているわけだ。一方で農水省の役人は2,3割しか減っていないという。
全体政策やらあるのでそのまま8割減るべきだとは思わないがそれにしても多いのではないか、ということ。
世界からみると日本の農業生産高は世界第5位だという。
物価問題はあるにしろ、生産高でみれば農業大国の部類ではあろう。
以前にこのブログでも書いたが、日本の食糧自給率が低いというのは世界でも希な“カロリーベース計算”で行っているためだ。
普通にスーパーにいけば分かるように“カロリーをとるための食料品”よりも“カロリーの低い食料品”のほうが圧倒的に多い。
つまり生産額で言えば世界有数の生産量を誇るのだが、低カロリーの野菜やら果物やらばかり作っているのでカロリーベースで言えばたいしたことがない、というだけなのだ。
自給率(食糧安保)を論じるためにカロリーベース計算をする自体は構わないと思うが、“農業という産業”云々を語るのなら生産高ベースで論じないとおかしい。
“農業を片手間にやっている”人達をサンプルしてそれで“農業という産業”の平均年齢を出して論じるのもおかしい。
“農業従事者の平均年齢66歳”は事実ではあるのだがそれは“農業という産業”の未来を論じたり“食糧安保問題”を論じるにあたりそのことを引き合いに出すのは間違っているわけだ。
きちんと産業として支えているレベルの専業農業者を分析しないと論じることは不可能だろう。
霞ヶ関の役人というのはこういうまやかしをいうのが得意だから気をつけないといけない、ということだろう。
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