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2026/08/22

東武鉄道 新鹿沼駅での事故から学ぶこと

4人が亡くなるという痛ましい事故が起きてしまった。
警察や国交省もすぐに動き、業務上過失致死を念頭に検証・捜査が進んでいるようだ。

流石に大手の東武鉄道なのですぐに記者会見が行われたが、なんとも歯切れの悪いものであり、残念だった。
その根底にあるものは何か、と事実関係を整理していくと、他人事ではない反省もある。私のいる会社ではたまたま人身事故にはならないだけの話だ。

ヤフーニュースで色々なコメントがあったがかなり情報や認識が混乱している様子。

まずは事故について整理していく。Copilotの助けも借りて会見情報を基本に頭を整理していった。生成AIというのは頼りになる。

当事者は

  • 現場作業員(この方々が亡くなった)
  • 列車見張員(実質的な”現場監督”)
  • 中継見張員(現場から列車の来る方向に315m先)
  • 列車の運転手

列車が来たときの通常の流れは以下になる。

  1. 中継見張員は、列車が近づいたら手旗信号で列車見張員に列車が来たことを伝える
  2. 列車見張員は、その情報を受けて、現場作業員を退避させ、手旗信号で退避完了(OK)を運転手に伝える
    もし危険と判断したらその旨(NG)を手旗信号で伝える
  3. 運転手はそれを見て警笛を(多分軽く)鳴らして通常進行。もしNGなら駅に入らず停まる。

ここでいくつもの疑問点が生じる。これをQA形式で纏めておく。

Q:列車見張員はダイヤとか駅構内情報などは使わないのか
A:ルール的には使わない。あくまで中継見張員による目視のみを判断基準とする。
補足:遅延や早着などを考えれば妥当ではある。時計並みに列車運行は正確、というのは結果であってそれに頼るのは間違いと考えるのも妥当。参考程度にならと思うかもしれないが、それが予断となって誤認ミスに繋がる危険性もある。

Q:中継見張員が「意思疎通不能」とはどういう意味か。何が起きていたのか
A:会見では回答しなかった。
補足:これを不満に思う、訝しむ人も多いようだ。後述するが、これは本質的にはどうでもいいと私は考えている。

Q:列車見張員がNG指示を出したとしても列車は止まれないのではないか
A:東武鉄道は問題ないと考えている。
補足:私も問題ないと思っている。この列車は新鹿沼駅には停車予定だったから。踏切事故や保線事故とは状況が違う。

安全に駅構内に止まる準備は始めからされていた。見える前から減速体勢にになっていたと考えるのが自然。
もし異常事態を駅構内の列車見張員から受けていれば急停車にはなるものの、駅構内の作業者を轢かない位置で止まれた可能性は十分にある。
電車の運転をゲームでもやったことのある人なら理解できる。数センチメートル単位誤差で止まれるなんて神業。数メートルから下手だと数十メートルぐらいはすぐにズレてしまうのが電車の停車の実態だからだ。

運転手はOKの指示を見て駅内に入った。ところが線路にはまだ作業員がいて慌てて急ブレーキをかけたものの、間に合わず。
運転手には瑕疵を問う声もあるようだが、私はそれを求めるのは妥当ではないと考える。

では何が問題なのか。

まず一つ考えるのは列車見張員がなぜOKサインを出してしまったのか。

中継見張員が意思疎通不能ということは、列車見張員(現場監督)が列車が来たことを認識できない状況だったということ。
列車見張員が自分で見て認識した時点では既に遅い。だから中継見張員が専任している。言い方は悪いがパニックになって思わずOKを出してしまった可能性はある。
なぜなら普段OKの手旗しかしてなかったから。当たり前だ。NG手旗なんて実際の状況で振ったことがあるわけがない。
”パニック”を起こしたのが悪いのではない。中継見張員が不在という”異常事態”の中で電車が見えたという”想定外”になったのだから当然の結果だ。

では中継見張員が悪いのか。意思疎通不能とは意味不明で東武鉄道の”隠蔽”も疑われるような表現だが、それを追求しても意味が無い。
腹痛や熱中症、色々なことは考えられる。一旦近くの車に戻っていたという話もあるようだが、そこを突き詰めても意味が無い。

問題は中継見張員が”意思疎通不能”状態にも関わらず作業が続けられたことだ。

この”グループ”にとって中継見張員は”目”である。

作業を続けるということは目が見えなくなっても車の運転を続けるような無謀さである。
誰だって運転中に「目がおかしいぞ」と感じたらすぐに左側に寄せて停車するだろう。

つまり列車見張員は、中継見張員からの情報が取れないと判断した時点で、直ちに作業員の作業を中止し線路から引き上げるべき、ということだ。なぜならそれを出来るのは列車見張員だけだからだ。

そしてこのことが「マニュアル」「社内ルール」等に明記されていたのか、というのが最大の疑問である。

おそらく書かれていない。会見では言及されなかったようなのも残念だし、されたとしても明確な回答はなかったと推察される。
だからそのような「引き上げ」を自分の判断で出来る権限がないとされていたのかもしれない。(そうだとしたら私にはこのシステム自体が破綻しているようにしか見えない。あまりに想定が狭すぎる)

 

今回の会見で気になったのは「今までこれでやってきたから・・・」という発言が何度もあったこと。
つまりは「前例主義」「思考停止」である。

マニュアル軽視ともいえる。常にマニュアルを見直し改善していく。おかしいところがないか色々な人の意見を聞き、よくしていく。
それがマニュアルを守るということだ。変えないことを”守る”というのは明らかな間違いである。

人事異動がおきたら新しい担当の目でさらに改善が行われる。それが”良い企業”であり、長寿企業の優秀さであり、会社の資産である。
一方で”劣化した企業”では事なかれ主義、前例主義が蔓延っており、担当が主張しても上司などが拒む。
上司の許可がなければマニュアルは変わらない。そしてその担当もまた同じ主義に染まっていく。(我慢できない正常な人は辞めていく)

 

果たして今回は誰が”断罪”されて終わるのだろうか。業務上過失致死という罪は誰かが背負うことになるのだろう。
そして、おそらく”真犯人”はうやむやのうちに見過ごされて終わるのだろう。


(追記)TBSNewsDIGによると記者会見で

東武鉄道 施設部 佐藤部長:「中継見張員は374号踏切に着いてはいたけれども、列車見張員との意思疎通ができる状況ではなかった」

とのこと。

「病気とかか?」「スマホを見ていた?」なんて憶測も呼んでいるけれどもこの発言を真とすれば少し話が違ってくる。
作業開始以前の問題として、中継見張員にとっては指定された位置からは列車見張員と目線が通らない等のなんらかの理由で、手旗での連絡が不能だった、という理解が自然だろう。もちろん列車見張員にとっても中継見張員との意思疎通はできている訳がない。

初手から連絡がとれない、”目”が機能していないにも関わらず、監督者である列車見張員は作業員を線路に入れ、作業を開始させたことになる。
目がほとんど見えていないのに車を出して運転を始めたようなものだ。

憶測が飛んでいた、突発的に中継見張員が消えたのではという”アクシデント”発生ならまだ話は違うと思っていた。
しかし、これでは明らかに列車見張員が”アウト”ではないのか。
もし彼よりも上位の者が「いいから始めろ」という主旨の指示をした可能性はあるが、その場合はその上位者が”アウト”である。

この話がまたひっくり返る話があるとすれば、実はその後は意思疎通が取れてました、なんだけど、じゃあ、なんでこんな発言をしたのかという話になる。または記事があえてその発言を飛ばして誤認識を誘導しているか、という話になる。

もちろん細かい話や経緯は後の調査で明らかになってくるだろうが、まっとうな報道をしていたとすればここまでの情報でもほぼ絞れてしまったように思える。

あとは「なぜ、開始できる前提が揃っていないのに、作業員に開始指示をだしたのか?」という点に絞られてくる。
「開始前提をどのように認識していたのか」という点も当然出てくる。
マニュアル・ルールの整備も含めてどの程度やるべき行動を規定していたのか(現場裁量と規定とのバランスは妥当か)、というところも焦点になるだろう。

それにしても、この事故は不明瞭なところが多すぎる。
東武鉄道による説明図では線路に降りているのが亡くなった4人、他に列車見張員の他に3人の作業者とされる人が図示されていた。この3人は一体何者なのか不明だ。仮に同等権限の”列車見張員”であれば「船頭多くして船山に上る」で現場は必ず混乱する。そこにもし私が懸念する”上位者”がいたとすればさらに状況は悪い。もし線路に降りている4人と同等役割で交代要員なら特に問題は無いのだが。

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