企業の生産性が低いのを社員のせいにするな
日本は生産性が低いのは日本の税制度がおかしいのが根本にあり、企業もそれに沿って事業をしてきた結果が、生産性の低さであるといえます。
社員のやる気ややり方、努力不足のせいにするような論調があるのが非常にムカつきます。
税制度の問題とは何か。それは法人税(利益課税)を下げたことと、消費税を導入し高くし続けてきたことです。
失われた何十年とこの動きが一致しているのは偶然ではなく、理屈から言ってもごく当たり前に説明ができます。
それをざっくりとした話ですが書いておきたいと思います。
前提知識として会社の会計・決算書の話をします。
全体の流れが掴めれば良いので本当にざっくりとした話だけします。
まず、売上、というものがあるのは誰でも理解できるでしょう。どんな会社であれものやサービスを売るのが企業・会社であり、売上を上げなければ話になりません。
これは一年単位で計算するので年商という言い方もできます。
次に当然売るものやその原料・資材などを買って(仕入れて)きます。
これを差し引いたのが粗利(売上総利益)と呼ばれ、ほぼこれに対して一定の割合の消費税を国や地方に納めている、という形になります。(結果としてそういう形になるということです)
次に販売管理費を引きます。ここに社員や会社で必要な経費、具体的には光熱費や事務費や交際費、社員の給料やボーナス・退職金の積み立て(支払)、福利厚生費なども含まれます。つまり社員の給料やボーナスを上げ下げするとここの費用が変わるということを理解しましょう。また設備投資などもここに入ってきます。社員から見てのいわゆる経費がここに含まれますから、出張精算もそうですし、例えばIT化でPCをリースしたりライセンスを持ったりすればここの費用になります。
この販売管理費を引いたものを経常利益と言います。
ここに事業外収入支出、金融関係の収支を加味することで純利益というものが出てきます。
その純利益に対していわゆる法人税がかかります。
税金を払った後、つまり税引後の残金が本当の意味で、手元に残ったお金、ということになります(これを税引後純利益ともいいます)。
株式会社であればここから一定の割合で株主に配当します。本来ならこれを社員で山分けしてもいいような話ですが、実態はそうはなっていない、ということにも着目すべきです。
この現金が翌年に持ち越されることになります。ここが着目すべき点なのです。
この流れを理解しておくと、株式投資には必須とも言える決算書を読むにあたり(これすらを知らないでやるのは投資ではなく単なる投機、バクチのようなものです)、いわゆるキャッシュフローの部が分かりやすくなると思います。
これらを踏まえると法人税を下げ続け、消費税を上げ続けるということで、設備投資が抑えられ、給料が抑えられ続け、設備投資も抑えられ、生産性が上がるわけもない、というのは当然の結果である、と理解できるのではないでしょうか。
例えば派遣社員問題もそうです。単に人件費を下げる派遣社員や非正規社員を登用していると生産性は上がりません。なぜなら生産性向上を妨げているのは多くは会社の制度や慣習、ルールによるものだからです。そこに抵触する変更は”社外”の人間がいくら言っても通るわけもありません。そもそも従業員としての活動も制限が多いのです。会社が依頼した業務のみを遂行するのが大原則です。依頼もしないカイゼン活動など提案のみならずそれに時間を費やしたことが判明したらマイナス評価しかありません(もちろん最終的に生産性向上のコンサルティング目的で派遣社員を入れて現場情報を収集するのは別の話です)。人件費が下がり、生産性が一見上がるような数字になるのは入れ替えた時だけです。持続性の観点で言えば状況は悪化しています。
税制上、現在もなお、どんどんこの問題を悪化させている、少なくとも悪化への追い風になっていると言えます。
別の言い方をすれば税制上の優遇措置の影響が高さ・効果を考えるのなら当然のように誘導されているとも言えます。
念のため補足しておきましょう。
このような構造をざっくりでも理解しておけば、税を取る方=財務省からすれば法人税ではなく消費税が安定しているのは容易に理解できると思います。
景気などによって売上というのは意外と変わらないのです。儲けを無視しても売上を確保するというのはどこの企業もやるからです。結果として数割も増減すれば大きい方で半減もしたら経営の危機とかに見られてしまうからです。
トランプ関税ですら、本来関税分はそのまま転嫁=値上げにするべきなのに、売上が減るからと言って儲けを削ろうとしているくらいです。
売上や仕入れの部分では殆ど変化がないので消費税というのは安定した財源となるのです。
一方で法人税は最終の残金にかけるものですから、いわゆる儲けを削ったら大きく減少してしまいます。結果として最終利益は赤字やゼロに近くなったりします。もちろん景気が良ければ額も大幅に上がるのですがね。
財務省としては消費税を上げて法人税を下げた方が、景気高揚策をしなくて済むので、財務省としては楽な構造になっているというところに着目をすべきです。(もうひとつ外形標準という、会社の規模に応じてかける税金というのもあります。こっちはとる方からすればもっと楽な税です)
では、どうすれば良いのか。
簡単です。この状況を逆にすれば良いだけのことです。
消費税を下げ、法人税を上げれば良いだけです。
もちろんゼロイチの話ではありません。両者の按分を考え直せ、という話です。
単純に会社の存続を考えて、極論を言えば、翌年への繰越金などはゼロで良いのです。
一般家庭と違い、老後の心配なんてないし、病気の心配もありません。子供にかけるお金なども含め、衣食住等や経費含め使いたいお金をを全部差っ引いたあとの残金の話なのです。
「宵越しの金は持たぬ」でいいのです。来年もまた稼ぐのですから。
つまり極論を言えば残金は全部国庫(地方)に納める、でも良いはずなのです。
もちろん株主への配当金は必要ですから。それなら株主配当金なども含めて本当に全部引いてからで考える手もあるでしょう。
また翌年赤字で倒産が怖くてお金を貯め込むという心理も当然分かります。そもそも公助も含めて積立金のようなものを整備することは必要でしょう。事業継続のための公的融資の在り方も考える必要もあるでしょう。それらの積立金を引いてからの宵越しの金で考えれば良いのです。個人や家庭だってそのために保険を掛けていますよね。事業継続保険金、不景気保険みたいなのだってありでしょう。その掛け金も経費として認めれば問題ありません。
そうして「どうぜ国にとられるのなら社員に配ったり、生産性を上げるために投資した方が得だろ」と会社に判断させ、誘導すべきなのです。
給与は恒常的でキツいというのなら賞与(ボーナス)でもいいのです。社員にバラマキをしての問題なんか、会社外からの妬みぐらいです。こんなのは今期だけというのなら設備投資と称してなにかどんと買えばいいのです。生産性を高めるための投資も含まれます。これらの投資により社員のつまらぬ精神的負担が減り、よりクリエイティブなところに頭を使えるようになります。よりカイゼンも進むのです。
福利厚生施設・設備でもいいでしょう。例えばトイレを綺麗に改装したっていいのです。綺麗な化粧台をつけたっていいのです。
こういう細かいところが社員のエンゲージメントを上げていくのです。極端な話、薄暗い汚れが染みついている和式トイレだったら誰が務めたいと思うでしょうか。
そもそも法人税を下げたのは海外からの企業誘致が大きな理由として挙げられていました。
起業ハードルを下げる試みも色々されました。
しかしそれが果たして正解だったのでしょうか。
むしろ害悪のある企業、ダミー企業による悪事の方が目立っている始末です。
そしていわゆる内部留保に対する批判も高まっています。大企業ばかりではなく中小でも内部留保の拡大が観測されています。
「消費税を下げろ!(ゼロにしろ)」は目先の消費者動向だけではないのです。
「財源ガー」という人には「法人税を数十年前に戻せばいいんじゃね?」と返すべきです。
これらを含めて見直しを是非ともしていただきたいものです。
繰り返しますが、これは財務省からすれば「税収が不安定化する」「景気対策(にかかる支出)を考えなければならない」とデメリットしかないので絶対に反対します。当然社会保障を人質に取って脅しすら掛けてきます。しかしそれは、あくまで取る方の理屈です。
それを動かすのは政治です。政党の理念や意思、考え方です。
今回、50年近く続いてきた「暫定税率」の大きな障壁がようやく動き始めました。
維新の会が抵抗しているせいで軽油は置き去りとなっていますが、少なくともガソリンの撤廃の年内実現はほぼ確定的になっています。
これは間違いなく国民民主党が掲げ、参議院選挙で支持され、他の野党も同意し、自民党大敗を受けて自民党も折れた、という結果です。
衆議院で与党過半数割、参議院も過半数割したため、野党統一であれば法案が通るからです。与党自民党が折れたのも形として「野党強行採決」(という表現もおかしいですが)で法案が通ってしまう形を作るのは嫌がったからでしょう。
政治は動くのです。なぜ動いたかと言えば「ごく当たり前の正論が誰もを納得させた」結果だったと言えます。
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