技術的に「今の」電気自動車がダメな理由を書いていこう。
先の記事は電気自動車以前の問題点の指摘であったので、今度は電気自動車だからこその問題を書いていく。
私は将来に亘って電気自動車がダメとは思っていない。しかし今のは明らかにダメだ。
その理由について書いていこう。
一番ダメなのはリチウムイオン蓄電池を使っていること。
いうまでもなく電気自動車の要は電池である。現在、値段が高いことを含めて本質的な様々な問題要因となっている。
ご存じのようにリチウムイオン蓄電池はスマートフォンを始めたくさんの携帯機器に使われており、性能が高いことが知られている。
しかしこの性能の高さは従来の乾電池やニッカド電池等に比較しての話であって、自動車のように悪条件で馬鹿でかい電力を使うことには向いていない。
エネルギー密度というが、重量あたりに持っているエネルギー量が、ガソリンと比較すると全く低すぎる。
電池というのはガソリン車の場合はガソリンタンクに相当するが、ガソリンタンクなんて軽いものだ。タンク自体の値段なんかしれているだろう。ガソリンは40リットルいれても40kg程度。
一方では電気自体は重さはゼロだが、電池そのものが重すぎる。空でも満タン状態でも重さが変わらない。
これが値段の高さと車体重量という形で問題となってしまう。
スマホ程度、手のひらサイズでも数千円もするのである。自動車を動かそうとすればトン単位の電池が必要となり、値段が数百万オーダーになるのは極当然の結果である。
そしてさらに問題なのは廃棄時の問題。スマホは日本では電池は本体と共にキャリア業者(ドコモ等)が責任を持って回収することになっており、その他の携帯機器でも業界で協会を作り、店頭等で回収し、回収費を負担している。
このことから、リチウムイオン蓄電池の処分においてそこから資源を再回収する(独立採算可能)などというレベルでは全くなく、金をかけないと処分ができないということは明白なのだ。(これはニッカド電池等でも同様)
果たして、テスラやBYDはそういう負担をしているのか。
回収システムを作っているのか。これはどうも「検討中」ということだから存在していないという無責任状態なのだ。
テスラやBYDはまだ責任をとってくれるかもと期待はできるが、あっという間に潰れて破産、今まで売った電池のことなんか知らない、となっても全く不思議でも無い。
現在中国では有象無象の会社が電気自動車を作っては潰れ、大量に放置ー廃棄されているという噂がある。電気自動車墓場というような写真も出ているがフェイクかどうかは分からない。まあ、中国だから今までの前例からして否定できる余地はほとんどないよなという話ではある。
もちろんこれでは「環境に良いどころが重大な環境の悪化を招いている(重金属汚染)」ということである。
これは電気自動車の本質的な責任では無いとごまかす輩もいるが、結果として招いているのだから否定するのは間違いだ。
「じゃあ、他に代替え案があるのかよ」というかもしれないが「ない」。
「ない」からこそ、まだ電気自動車は時期尚早だ、という話なのである。
他にも重大な問題がいくつもある。それは動作温度が5℃~45℃であること。
普通に使えるのがこの温度範囲内で、これ以上や以下だと極端に性能が落ちるという意味である。
温度が低いと内部抵抗が高くなり、そもそも動作しない場合もある。
寒い場所に置いておいたスマホの電源を入れると、さっき充電したばかりのはずなのに、電池が残り僅かになっている経験がある人も多いかと思うが、まさにこの現象である。内部抵抗が高いと電圧が下がってしまい、電池残量が無いと同じ状態になってしまうのだ。
また、使えても内部抵抗が高いと電池内部で電力が無意味に消費されてしまうため、距離辺りの電力量が増えて走行距離が減る。
プリウスなどでも寒い地方では燃費が悪化するという話は良く聞くが、これは暖房要因ももちろんだが、電池そのものの性能が落ちてしまうことも大きいとされている。
電気自動車では致命傷となるので、これを回避するために電池を暖めるヒーターがついている機種も多いそうだが、当然暖めるにも電力が必要となる。
一方で温度が高くなると自己放電や性能の劣化が起きる。
自己放電とは特になにも使っていないのに勝手に電池残量が減っていってしまうという意味である。
性能の劣化というのは電池の寿命が短くなるということ。充電できる量が減ったり、最終的には壊れるという意味である。
最悪発火などを起こすことでさらに温度が上昇し大炎上することも起きえる。
これはスマホでもクルマのダッシュボードで炎天下に晒していたりして実際に時々起きており、また粗悪なモバイルバッテリーで発火、炎上を起こすというのは時々ニュースや動画でも出るから見たことがある人もいるだろう。
問題なのはこの動作温度である。繰り返すが5℃~45℃である。
これはスマホや携帯機器等では、まあ、妥当である。なぜならこの温度で普通は生活しないからである。
一方で自動車の部品としてはどうか。冬に零下になっても不思議でもないし、夏の炎天下で45℃以上になっても不思議では無い。
これを回避するには青空駐車など論外で、少なくとも屋根はもちろん、締め切ったガレージが必要で、場合により冷暖房すら必要であろう。
そんな駐車場、大金持ちかド田舎の裕福な農家かよ、って話であり、行き先で安易に駐車することすらできない。
しかし電気自動車というのは、実はこういう代物である、というのが事実なのだ。
これらの欠点を克服するものとして全固体電池があげられている。
まだまだ未知のものであるから全く評価ができない。
もちろんより自動車に適した特徴を持ったものではあるようだ、程度の話である。
宣伝されている話を信じるのであれば、先に挙げた重大欠点である、エネルギー密度の問題、劣化問題、発火問題、充電速度の問題などかなり克服されているので、電気自動車としてかなり改善されたものになることは言えるだろう。
ついで電池の寿命も問題だ。
いわゆる「スマホの寿命」というのは殆どが電池が持たなくなったからというのが多いようだ。電池の交換をすれば実はもっと使えるのだが、電池交換は高いし機種変の方が安いという話である。
そしてこれが5年とかそういう感じで10年も使っている人など殆どいない、つまりそれまでに電池が使いものにならなくなる。
その程度の寿命なのだ。
一方で自動車が10年寿命と仮に言ったりすると「もう少し乗りたい」と思う人も少なくないだろう。
特に日本車に乗っている人などはそうだろう。
ところがリチウムイオン蓄電池はそこまで寿命はまずない。これはメーカーも言っている話だ。
寿命を公表しているが、よく読むと、到底あり得ないような条件設定、での数字でしか無い。
当然その条件より悪ければより寿命が短くなる。類推すれば5年持てば良い方じゃ無いか、という数字にしか見えない。
じゃあ、交換してくれという話をすれば、かかる費用はスマホと同様に、下手をしたら新車を買った方が安いという話になる。
これは故障で自腹修理(電池交換)となった人の顛末からも推察される。
そもそも例えば10年後に同じ電池を交換部品として存在しているかも怪しい。
もっと突っ込めば、それが未使用品だったとしても何年も前に造られたもので新品同様からは程遠いかもしれない。
仮に新車同様の金を払って交換してもあっという間に使いものにならなかったら話にもならない。
こういった状況のどこが「環境に良い」のだろうか。
ガソリン自動車なら丁寧に大切にメンテナンスしたり、オーバーホールして数十年乗っている事例だっていくらでもある(他の人が乗り継いでいるのも含めて)。製造や廃棄にかかる環境負荷を低減しているのだから、こういうほうがよほど環境に良いと言える。
次に充電費用やインフラについて考える。
インフラはこれから充実していけば良い、等という楽天家も多いようだが、そもそもそこから破綻していることに気づかないのだろうか。
まず、無料充電設備。
こんなものは最初は広告効果込みでやっているところもあったが、どんどん閉鎖されているのが現実だ。
壊れたから終わり、というところも多いらしい。壊れたまま放置というところも良く聞く。
統計上の充電設備は増えるどころかどんどん減ってさえいるそうだ。これはほとんどが無料充電設備なのだろう。
一方で高速道路やディーラーでの充電設備はきちんと増えている。一時期どさっと増えた設備に比較すれば数が少ないから全体としては減っているだけ、という見方もできる。そもそも無料で維持できるわけが無いのだから持続可能性の観点からは健全化しつつある、と言っても良いだろう。
自宅で充電設備を持って家庭電気料金で充電するというのが基本となる。
そうでないと割に合わない。また、契約プランも見直して最適化するのは最低限の話だ。
既に買った人のレポートによれば、街中にある充電設備で充電するのはガソリンと比較しても高くつくのが現実のようだ。
これは充電した電力量では無く、接続した時間単位で課金される、という点も大きい。
ガソリンでいえば何リットル入れたからいくら、ではなく、10秒入れたらいくら、という感覚である。
「じゃあ、チョロチョロしか出なくても同じ値段なのかよ」と言いたくなるが、その通りである。
やや技術的に言えば、自動車側の規格と充電器側の規格の間で最適な方法で接続し給電される、ということのようだ。
見ていると、この最適方法を探るのに自動車側と充電器側で通信を行っているのか、電気的特性を探り合っているのかをしているようで、”運が悪い”とお互いに最悪、つまり低電力でしか充電をしないということも当然起きえる。
単に払うお金の問題だけならまだいい。(いやいや良くは無いだろとは言いたいだろうが)
問題なのは、ほぼ一回で最大30分の時間制限での充電であり、しかも”満タン”には程遠い。
実車のレポートは高速道路でのものが多い(まあ、わかりやすいからね)が、概ね100kmを1時間走って30分充電すると走行距離が100km伸びる、という塩梅である。
つまり、走行プランとして100km1時間走ったら必ず30分の充電休憩はほぼ必須である、と言って良い。
もちろん家を出るときは満充電が必須である。帰りも高速に乗る前にこまめに充電して満充電にしておかないと怖い。
さらにこの30分は厳守である。少なくとも一辺自動車まで戻ってこなくてはならない。なぜなら次の順番待ちの自動車がいるかもしれないからだ。もっと休憩したければいったん普通の駐車場に移動してから休憩の続きをする。
その時点で充電量がどうにも足りなければもう一回後ろに並んで、というのが人として当然のマナーであろう。
こんなので果たして走行プランが成立するのだろうか。私にはどうにも耐えられない。約束があれば数時間は余裕を持っていかないといけない。渋滞が予想されるのならさらに余裕を持つ必要があろう。
上記の話は、比較的好条件での話と考えた方が良い。
大抵のレポートは東京、名古屋大阪辺りだから良いが、これがその他地域だったらかなりヤバイというのは容易に想像がつく。
関東ならまだしも、東北や山陽、山陰、中央、北陸等でもガソリンスタンドすら激減しているのに充電設備など期待ができる由も無い。
ちなみに料金も先ほど書いたように「運不運」にも大きく左右されるが、ざっくりリットル20km相当でガソリン換算するとリットル300円~500円と言った感じになるようだ。
さらに付け加えると高速道路の充電設備を使うには「会員」になる、つまり使わなくても払う基本料金が必要となる。
年に数回しか高速をつかわないよ、という人には画面できる出費なのだろうか。
もちろん「ゲスト扱い」もあるようだが、当然、単価は上がる。
家での充電が必須だ、と言ったのはこういう意味もある。
高い電気自動車を買うのは、ガソリン代(燃料代)を下げたいから、だろう。その額が上がってしまったら割に合わない。
多くの人が高いハイブリッド車を買うのは燃費向上で元が取れそうだから、である。
自宅や、運が良ければ旅館等で安く充電できるかもしれないが、そうでないかもしれない。
さらに追い打ちをかけるが、暖房でのエネルギー消費の話もある。
冷房はまだ良いのだが、そもそも暖房というのは思ったよりもコストがかかる。
冷房は、室内26℃とすれば外気温が35℃としてもその差はたった9℃である。
ところが暖房は室内22℃としても外気温0℃ならその差は22℃もある。
温度差があればあるほど、その温度に到達するまでのエネルギーはもちろん、出入りする熱量も大きくなるから維持するエネルギーも必要となる。
ガソリン車が有利なのはエンジンが発する熱も流用して暖房をしているというところにある。
ヒーターやヒートポンプ(エアコンと同じ)とのいわばハイブリッド暖房となるが、元々捨てるつもりのエンジン熱の流用分だけ、暖房に使うエネルギー量は減らせる。
一方で当たり前だが電気自動車では100%電気で暖房しなければならない。
それどころか、先に書いたように電池の温度が低いと性能が悪くなるため、電池を温めなくてはならない。
つまりガソリン車比で原理的に多くのエネルギーが必要としてしまう。
冷暖房の使用有無で燃費が大きく変わることはガソリン車に乗っていれば当然ご存じであろう。特に寒冷地の方は。
これは走行距離の低下はもちろんのこと、燃費も悪化させてしまう。
そしてもう一つ問題となるのはその重量である。
ハイブリッド程度ならさほど必要なかった電池も、電気自動車では走行距離と電池の量は比例するので、客の要望に応じるようにどんどん電池をたくさん積んでいった。
SUV等ではそもそも重いので、より一層多くの電池を積むことになる。
そのあげく酷い話になると、あるSUVでは4トンを超えるそうで、同格のSUVガソリン車なら2トン程度だという。
つまり電池だけで2トン近くもあるという話になる。ここまでくると呆れるが、セダンだって何百キロも重いので同罪だ。
重量税、というのがあることから分かるように、自動車にとって重量というのは非常に重要な要素である。
燃費の悪化を軽減するために余分な荷物は下ろしましょう、なんていうくらいだが、それだって100kgもない話だろう。
人によってはガソリンの重さから来る燃費を気にしてガソリンを満タンにしないなんて病的な人までいる始末だ。
それなのに数百kgやトン単位で電池のために重くなる、なんて馬鹿馬鹿しいにも程がある、と思わないだろうか。
同じ距離の走行に余計にエネルギーを使うことは当然ながら環境に良いわけが無い。
重量税というのは車重による道路への負荷を考慮し、重ければ重いほど、道路整備のための負担をより多くすべきだ、という観点から重税を課している。
ざっくり言えばアスファルトならそれを余計に削ってしまう、破損を加速してしまう、修繕がより頻繁に必要ということである。
自動車側もタイヤの減りは速くなるし、減ったゴムは粉塵となって環境汚染となる。
一言で言えば、車重が重いことは環境負荷の観点からも百害あって一利なし、ということだ。
これはガソリン税でも重いSUVやデカいクルマに乗っている人への非難として言われてきたことだが、そのまま電気自動車にもあてはまってしまう話なのだ。
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