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2023/12/20

ダイハツ不正問題のニュースを見て思ったこと

まだ細かいところや報告書を読んではいないので、分からないところは多い。
その上での最初の印象論。

直接の原因は、検査員の不正行為であるという。
なぜ検査員が不正行為に及んだかといえば、開発(出荷)日程に齟齬が出ないようプレッシャーがかかった、という。

私はこの顛末に非常に違和感を持った。

これは経営陣の不作為はもちろんのこと、会社組織、評価制度がおかしいと。

検査員というのは品質評価部門のひとつであろう。
基本的に彼らは「品質を満たさない場合、それが出荷できようができまいが関係ない」。いや、そうでなければならないのだ。
もし、ある新製品が検査や試験にパスできなかったとすれば、その責任は開発設計部門であり、その製品を設計通りに作れなかった調達・製造部門なのかもしれない。少なくとも検査員にはない。
不合格であれば淡々と不合格ですと差し戻して、担当部門が設計や製造の再検討をしなければならない。

入試なり資格試験なりのなんらかの試験を考えて欲しい。
それに合格しなかったらその試験官や採点者に問題があると言う人がいるだろうか。受験したその人に問題があるだけだろう。
検査員というのは試験官や採点者に過ぎないのだ。

仮に不合格であった場合でも、基本的に次に合格するためのアドバイスを彼らが与えるべきでは無い。
試験官(採点者)が伝えられるのは、試験結果という事実だけである。(その結果に至る詳細情報を渡すことは問題ないだろう)

試験というものは、試験官が誰であろうとも合格するものは合格だし、不合格するものは不合格、という単純に科学的作業に過ぎない。
そうでなくてはならない。
可能ならAIやロボット(自動機械)だけでできる話でもある。実際、自動試験機にかけて終わる項目もあろう.

むしろ試験官によって合否に影響を及ぼすとすればその方が問題である。
検査しているものに検査員が手を入れるというのは、回答用紙に誤答をみつけて採点者が修正するのと同義である。

だから検査員に対する会社の評価というものは「合格か不合格か」ましてや合格率の類では決してなく「検査が適切・適正に行われたか」の一点に過ぎない。
プレッシャーというのは「正確な手順で正しい試験機械の状態を保ち、適切に行えたか」に感じるものであって、それが必要以上の時間をかけてはならない、というのはあっても、不合格による日程の齟齬などに関して感じさせてはいけない。

それなのに「合格する(させる)ことがプレッシャー」になっている時点で全くをもって狂った話と言わざるを得ない。
例えば何かの試験で試験官が「試験会場の特定の誰かを合格させねばならないと言われた」という話に置換えれば、それは不正であると誰もが断罪するだろう。そして誰かからのコネなのか、上層部からの圧力なのか、金目的なのかと邪推し出すだろう。

そもそも「合格するのが当たり前」と思っていた経営陣、上層部、管理職がいたとすれば大馬鹿野郎である。
実績として合格率100%が何年も続いたらそれは「異常事態」と考えるべきでは無いのか。

仮に開発過程で何度も検査同等の「デザインレビュー」の類を部分的に充分に行っていたり、事前試験や検査ができる機器が開発部門にもあって日頃から充分に確認を行っているというのなら、一発合格も頷ける。
しかし「異常なまでにどんどん縮まる日程」が指摘され「トヨタ親会社化による異常なコストカット体質」が見えるのだから、これらが真っ先におざなりに、ないがしろにされカットされていくのはごく自然なことである。

そんな現場で合格率100%を維持していたとするならば、仮に検査に通っていて問題ないことは良いとしても、それは「新しい技術、開発に挑戦していない」という証左でもある。これは技術を誇る会社であれば深刻な問題であり、そうでなくても思い切ったコストカットにも挑戦しておらず、同様に問題である。
少なくともこの異常事態を感じ、その原因を探ってその結果が「日頃から十分な機材で検証しながら行っているからだ」という結論であれば構わないが、漫然と「うちの技術力は凄い」とか思っていたとしたらば、それ自体が大問題である。

検査ですら捏造データなのだから、デザインレビューの類でも日程進行最優先で、捏造データを積み上げて次段階を認可としていてもなんら不思議では無い。ここでも問題がある。そこに幹部クラスが関与していないとしたらそれ自体が問題だし、関与していたとしてそれらの捏造データを簡単に信じたり、矛盾を看破できていなかったとすればそれも問題である。

 

エラそうなことを延々と書いたが、で自分の職場を見ても、まっとうであるとは言い難い。

小さな報告であっても事前のすりあわせを内密に行って「一発で通る」ような報告を要求される。
ガチの論議はしたがらないのが実態なのだ。それはせいぜい末端のごく一部の現場でやっておけということらしい。
過程を残し、後進のために、と思っても「結論だけ書け」と口やかましく言われる。上層部にいけばいくほどだ。

中間の幹部辺りからは事前チェック段階で「この部分はどうもおかしいから精査しろ」と言われる。これは「この数字を上に報告すると不都合だから変更しろ」と言う意味である。
こういう指示や空気が上部へ正確な情報を遮断し、判断を狂わせ、モラルを崩壊させ、おかしな論理建てが横行し、論議を避け、都合の良い、しかも捏造されたデータが回っていく。辻褄合わせやごまかしの技量が重宝され、科学的、論理的な思考を疎んじていく。

会議という名の、報告会ばかりでうんざりする。

まあ、それでもいい、あと数年で終わりだから。こういうのを老害という。

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