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2023/11/23

制度設計が最悪なインボイス制度への怒り 

インボイス制度、これは俗称で「適格請求書等保存方式」という。
もう、この時点で財務省の悪意が見えてくる。
難解そうな印象を与えるが、これは正に名の通り難解至極な制度となっている。

本来の「インボイス」という言葉をねじ曲げてしまっているからだ。
「適格請求書、いわゆるインボイス」という言い方も完全におかしい。

本来の「インボイス制度」であればなんら問題は無い。
「欧州はインボイス制度が当たり前で本来の姿だ」としたり顔で言う人もいるが、欧州等と同じようなインボイス制度なら私も怒らない。

しかし今回施行された「インボイス制度=適格請求書等保存方式」は悪法である。
制度の趣旨、向かう方向については異論は無いが、制度がどうしようもなく悪設計で杜撰であるということだ。

適格者登録番番号の悪

賛同者がよく言う「欧州はインボイス制度が普通にある」という。
では「適格者登録番号」というのはその欧州各国にあるのか。否であろう。
この番号登録制度が確実に事務手続きの増加と混乱を招いている。そしてこれからも継続的なトラブル要因になる。

そもそも請求書の”真贋”を判定するのにこのような番号を持って行う、と言うこと自体がナンセンスである。
税務署がちょっとだけ楽をするために、現場は労力を費やさねばならない。これほど腹が立つことは無い。
番号など無くとも取引先に連絡して請求書の真贋を確かめれば良いだけである。

これは免税事業者いじめである。そして自らは手を下さず、現場、各企業にいじめをするように仕向けた。それが一般的な見方であろう。私もそうとしか思えない。

免税事業者の課税事業者への移行問題

免税事業者を全て課税事業者に移行させることは今回の制度ではやらなかった。
財務省は自ら悪人になることから逃げたのだ。だからこそ関わった国民の怒りは収まらない。

公正取引委員会まで動員して行政は必死に否定しているようだが、免税事業者いじめをせざるを得ないのは取引先の事業者である。

これは税務署の資料において問題点となるケース、ならないケースを解説しているように見せて、その実は全くの「当たり前」のことしか書いていないという実態にも現れている。本当に判断に困るケースをあえて避けているのだ。
なぜならそこを追求し見解を書いてしまえばこの制度設計を自ら破綻させかねないからである。

本当の実務者にならないと分からない微妙なところなので、そこの説明を逃げても殆どの人は見過ごしてしまう。仮に私が言葉を尽くして説明しても伝わらないだろう。多分関係ない人はもういいやと読むのをやめるのは容易に予想がつく。ここが汚いやり口なのだ。

ごく簡単な言い方をすれば、別に悪意を持っている訳でもないが、結果・実態として実務者が免税事業者を追い込むしかないように仕向けている制度になっているということだ。

免税事業者の取扱がおかしい

適格請求書がないと、その分の税控除ができず、自分が損をする。この制度はそうなっているのが根源になる。
言い方を変えれば、この制度に準じないと脱税となるから遵守するのではなく、控除(納税減額)措置のために行うという動機になる。

免税事業者という本来の趣旨から言えば、免税事業者からであろうがなかろうが、仕入れをした以上はその分の消費税相当分は控除(減額)されるべきなのである。
これは「多くの欧州で行われているという付加価値税制度」である。
ここも欧州の「付加価値税制度」と日本の「消費税制度」を都合の良いところだけ使い分けて詭弁を弄している点である。

もうすこし言及すれば欧州には「消費税」などは存在しない。あるのはそれに近い「付加価値税」でしかない。
よく「一般国民(消費者)からお預かりした・・・」という詭弁に騙される人が多い。
当然ながら欧州の「付加価値税」にはそんな意識や前提は無い。
付加価値税という名の通り、売った額から仕入れなどにかかった額を差し引いた額、その事業者が創った付加価値であり、それに対して納税額を計算しているだけなのだ。

益税という虚構(個人事業主いじめ)

そもそも免税事業者が消費税額を払わないことを益税という表現を使う自体が物事を知らないとしか言いようが無い。
こういう話の文脈で「益税」という単語を出して事業者否定をし始めただけで「ああ、こいつの言うことはダメ」と決めつけることが可能なくらいだ。
益税というのは財務省が植え付けた「国民からお預かりした・・・」という虚構にまんまと騙されているから生まれる発想なのだろう。
「財務省の回し者」いや、財務省すら今は嘘がばれてそういう言い方は取下げたので残党レベルの人間に過ぎない。

なぜ免税事業者というのが存在するのか。現在は消費税制度における免税事業者は年商一千万以下となっている。
一つは取引が少額で事業規模が小さいため、納税処理負荷を軽減するという発想である。
もう一つは、低所得者世帯と同義であり、保護のために免税しようという発想である。

年商一千万以下というのは、どう計算しても個人事業か、家族でやっているか、良くてバイト一人雇えるかどうか、程度である。
要するに実質一人である。そんなところからむしり取るのは問題では無いのか、そういう発想になる。

これはスタートアップ事業の保護(今の多くの大企業だって最初は売上すら殆ど無い状態で一人や数人から細々と始めている)という観点もあるし、特化したスペシャリストが個人事業としてやっている形態もある。
今回社会問題として捉えられるのはこうした側面もある、ということによる。

免税事業者なんだから免税なんだよという当たり前がない

話を元に戻す。
本来は免税事業者であろう課税事業者であろうが、そこから仕入れた分の消費税は売った分の消費税から差し引けるべきである。
しかし今回のインボイス制度からは課税事業者しか差し引くことができない。
これが今回のインボイス制度の悪法(悪制度)たる根本なのだ。

これを「当たり前じゃん、今までできた方がおかしいんだ」という発想自体が財務省の仕掛けた罠に嵌まっているのだ。
そしてこの部分が「増税になる」部分である。

先ほどの繰り返しになるが、欧州の消費税(付加価値税)においてはそもそも「消費税をお預かり・・・」などという発想はない。
どこから仕入れようが「自らが付加価値をつけた分への課税」なのだから仕入れ先がどう納税していようが関係ないのだ。
だから混乱や問題は起きない。

じゃあ免税事業者は取り得とか益税享受でいいのか、とかいうのは、その発想から間違っている。
これも先ほど書いたとおり「極小規模事業者保護」に相当するから消費税相当は納税免除でいいよということでしかない。
低額所得者に対して「納税もしていない貧民が」「働かないほうが得だよな」と揶揄する人ももちろんいるので、それと同じレベルなんだろうな、としか言いようが無い。
殆どの人は「低所得者は納税が軽い、なくても構わない」と考えているのだから。

財務省には選択肢があった。この「極小規模事業者保護」は消費税に関しての優遇措置はやめます、とすれば混乱は少なかった。
つまり「免税事業者はなしです」とすれば良かった。
最悪なのは業務負担を増やす悪因のひとつである「事業者登録番号」である。本来はこんなものに必要となったのは財務省の逃げのせいである。

しかし自らへの批判を嫌がり、逃げた。そしてこの”嫌な行為”を当事者に押しつけるよう一般国民に分からないように巧妙に制度に仕組んだ。
さらに様々な経過措置などと言う批判からの逃げすら打っている。
こういうものは事業者に配慮した良い(ありがたい)制度だとうっかり思ってしまいがちだが、とんでもない。
これによって現実として現場を混乱させ、手作業を増加させている。もちろん双方にとってだ。
制度が煩雑だし経過措置中は手作業で処理するしか無い(よほど恵まれてないと経過措置対応のITシステム改修なんかできないからね)。

経過措置なんか財務省のアリバイ工作、批判回避措置であり、実態を知る人には怒りしか生まない。しかし怒りはトップに届かない。
よく制度を知るように”嵌められた”人はこのことに気づく。しかし多くの国民は気がつかない。
このことに絶望する人は少なくないのではなかろうか。
私はこのことに大きな懸念を抱くと共に、私自身も大きく消沈している。

日本を壊しかねない悪法(悪制度)

実際「私が何に怒っているのか理解できない」同僚(部下/上司含む)はいくらでもいる。
そして自分が関係してしばらく経つと、その巧妙さとともに、罠にはめられたことに気づき、怒る。

こういうやり方が本当に汚いやり方である。

もっと不味いことがある。

私の勤務先でも起きていることだが、責任の押し付け合いが酷くなりつつある、ということだ。

日頃のこのことに関する鬱憤がつい強い口調に出てしまう。
また、実作業の押し付け合いも起きてしまっている。

つい最近も(彼らが悪いわけでも無いが)言い合いになってしまった。
彼らも「結局は財務省が悪い」というのはよく分かっている。こちらももちろん分かっている。
私は会社では極めて穏便な方だ。それでもそうなってしまう。

そしてこんなことは日本各地で起こっているだろう。取引先とも決して良好な関係ばかりではない。
社内の(表面上はとはいえ)普段良好な関係同士ですら、こんなに嫌悪になってしまうのだ。

これこそが「この制度が日本を壊しかねない」と感じている根本にあるのだ。

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