消費税「インボイス制度」が分りにくいワケ
消費税にまつわるインボイス制度が世間を混乱させている。
国税庁の説明を見聞きしても訳が分からない。関連記事やサイトや資料を見ても訳が分からない。
もちろん私だけでも無い。世間が混乱しているのが目に見えている。
一般国民は「自分とは関係ない」と思っているのか。一部事業者が苦しんでいるだけにも見せている。
酷い状況だ。
この混乱はどこにあるのだろうか。
今回不幸にも会社でインボイス制度に関わることになってしまったため勉強したが、その過程で理由がいくつか浮かんできた。
そのことを自覚することが理解のために有用だと思うので書いてみたい。
なお、ここでは一から制度自体の説明はしない。
ここでは、説明を見ても分らない、頭に入ってこない理由を説明している記事である。
ここで理由を知って、頭を切替えて改めて説明を見聞きすれば少しは理解の助けになるのではと思っている。
消費税への勘違い
おそらくあなたの、そもそも消費税へのイメージが実態と違っている、理解が間違っているという点がある。
これはあなたのせいではなく、国税庁、政治家、それを鵜呑みにして説明をずっとしてきたマスコミや書籍等の責任が大きい。
もう30年以上前、まだ20世紀の竹下政権の元で消費税の導入時が画策された。世論はもちろん大反対となった。
それに対して「反対派の沈静」「ごまかすため意図的なミスリード」「おかしな制度設計や説明」が繰り返された。要はあえて不正確な説明を繰り返してきたということが背景にあったとみるのが妥当のようだ。
なお、この傾向は今回のインボイス制度導入においても多くのネット上の記事にすらみられ、不適切な説明が氾濫している。
「国民が負担する税」「事業者は国民からの税金を預かっている」そもそもここから間違っている。少なくとも適切では無い。
あくまで消費税を納めるのは事業者(店や製造業者等)である。購入者に納税義務は無い。
納税義務者が納税しなかったり、実態と異なった申告を行えば”脱税”という罪になる。
一方で最終製品の購入者、”国民”に消費税を支払う義務は無い。消費税相当分をコミで価格を提示し、それに応じたお客に商品を売っているだけの問題である。
内税・外税表示方式で揉めた時期もあったが、本来の意味での(国民に説明した趣旨の)消費税であれば「税表記を別」にすべきである。
しかし、本当の税の仕組みの筋、事業者(お店)からすれば「販売価格に応じて自分が払うのだから、実質値上げとして合わせて表示する」のが筋である。
だから揉めたし混乱し、何転もしたのだ、と今なら納得ができる。
そもそも「消費税」という呼称は日本だけである。しかし世界中にあると誤解している人が多い。
あくまで先進諸国は「付加価値税」という名称であり、このほうが日本の消費税もこの言葉があう。
しかしそこを曲げてでも「消費税」という名前でごまかし続けた。そこが大問題である。
なお、国税庁は現在ではちゃっかりと自分のホームページには「消費税(付加価値税)」と表記している。
国税庁としては裁判などで不適切さを指摘されているし、もはや隠す必要も無いと考えているのだろう。
まずは事業における消費税の仕組みをきちんと理解していなければそもそも話にならない。
どんなものでも、改変を理解するには、まずそれ以前の状態(仕組み)をきちんと理解することが基本なのだから。
「インボイス」という言葉の誤用(によるミスリード)
インボイスというのは貿易関係をやっている人にはお馴染みの言葉だろう。
税関を通すときには必須である「明細書」だからだ。
貿易をやらないでも海外関連業務に関わっていれば多少なりともイメージを持っている。
しかしこの「インボイス制度」におけるインボイスは全く別モノであることが、混乱を招いているのではないか。
既にある一般的な用語を流用して、別の書類の名称付けをするのは大きな間違い、罪ですらある。
商品においては「誤認」は消費者庁から指導が来るレベルの問題である。
もちろん国税庁のすでに言い訳は用意していて「正確には適格請求書というのだ」なのでしょう。
こういうやり方に私は大いに憤りを禁じ得ない。
なじみのありそうな言葉を別の意味で使ってごまかそうとする。こういうのははっきりいって詐欺師の常套手段である。
少なくとも正しく理解してもらおうという意図は一切感じられない。国民をなめているとしか言いようが無い。
「適格請求書制度」ではわかりにくい。だから「インボイス制度」と言って馴染みやすくしているのだ、と言い訳するのでしょう。
この感覚こそが国民をなめた、一般世間から乖離した大問題である、と猛省すべきことであり、国民も怒るべきところである。
結局国税庁の言うインボイスなるものは従来の請求書に「適格者登録番号」の記載を必須にしたもの、でしかない。
むしろ今回のキモはこれでしかない。
しかしながら、(後述するが)この「適格者登録番号」が実にいやらしく巧妙で汚い手口である。
もったいをつけて税別記載とかいくつか書いているが、そんなものは当り前すぎて別にどうでも良いレベルの話だ。。
そういうどうでもいい話で「適格者」という考え方、存在を少しでも薄めて目を逸らそうとしていると見れば、あの無意味で長たらしい国税庁等のおかしな資料の作り方も納得がいく。
「廃業」「倒産」問題とは
既に述べたように「益税」という概念は存在し得ない。しかしこのような指摘がときどき見られる。
この問題だけが取り上げられ、中身が論議されないので混乱だけしている。
今回の適格請求書制度のキモは既に述べたように「適格者登録番号」を記載させて「適格者(社)が発行した請求書のみを有効とする」制度であるといえる。
いままでは世間一般で認められる請求書であれば良かったのだが、これからはそうではない、ということである。
有効とは何か。
まず、消費税は事業者が納税すると言ったが、基本的には、例えば商品を売った売上分の納税をする。
しかし事業者としても商品を仕入れという意味で買った時に消費税を支払っている。
これでは二重払いなので仕入れの時に払った分の消費税は税務署から返ってくるのだ。これを還付という。
(正確にはこれは考え方であって、実際には還付分を差し引いて納税を行えば良いことになる。)
当然還付分の金額を証明するための書類(請求書等)が必要となるわけで、それに使えることを”有効”という表現をしている。
確定申告(年末調整)とかで請求書や領収書を添付して申請するが、それが控除として認められるかされないかと同レベルだ。
つまり「適格者からの請求書」であれば「還付」の対象になり、お金が戻ってくる形になる。
一方「適格者発行ではない(番号の無い)請求書」は、対象として認められず、お金が戻ってこない。
取引額の10%なのだからこの差は大きい。
では、なぜこのことが「廃業」「倒産」問題となるのか。
それは「免税業者」という歪んだ制度に係っている。
今回の制度変更は実は本来の姿であるのだが、問題なのはこの歪みを続けた期間があまりにも長すぎた。
消費税導入から既に30年を優に超えている。事業世代で言えば2世代変わっていても不思議では無い。
また、立場の弱い中小企業を”救済”する制度であったことも問題を深刻にしている。
「益税」という利権を享受し続けていたでは無いか、という心ない非難もあるようだ。
しかし殆どの現場において実態はそんなことはないだろう。
長きに亘る相次ぐ値切りや厳しい価格競争の中で「益税」分なんかとっくの昔に消し飛んでいることだろう。
高度成長期ならまだしも、正にデフレが続いた失われた30年の中だったのだから。
本来はやってはいけないのだろうが「あんたのところは納税していないんだから消費税分はいらんよね」とか値切り材料にされていてもなんの不思議も無い(もちろん請求書上は単なる計算上の消費税は書かれて偽装されている)。納税をきちんとやろうしていた事業者ても「不要なんだからやらないでその分安くしてよ」という圧力に屈してもなんら不思議は無い。
常態化して、もう30年以上。それが前提となってしまった現在、今回の制度変更は売上の10%分の事業税増税でしかない。
ここで再度思い出してほしい。消費税とは仮の名。事業者の払う付加価値税。事業にかかる増税であり、経費の一部に過ぎない。
事業をやる方は自分の努力と一切関係ない経費増となる。その価格転嫁を、買う側が認めてくれない。
認めてくれずどうしようもなくなれば「廃業」「倒産」しかない。
これは現在の原材料高騰を転嫁できないよりも厳しい。税金の話であり対策・回避策は無いのだから。
こういう実態を知らない訳が無い。強制的に課税業者にすると非難囂々となる。やっていることはどんな理由をつけようと実質的に小規模事業者への法人税大増税だから。
”賢明な”財務省・国税庁は強制的課税という方法をとらなかった。
やったのは今まで通り非課税事業者でいることは見逃すが、その代わり「適合事業者」としては認めないというやり口だ。
「あくまで事業者自らの選択である」と巧妙に逃げを打ったのだ。
先に書いたように「適合事業者」ではない請求書は消費税の還付の上では”紙くず”である。
よって注文を出す側は「適合事業者のみ」に発注することになる。結果としてその事業者は「干される」のだ。、
進んでも地獄、留まっても地獄。そういうのを選択とは言わない。
実態はこういった話なのにも関わらず、言葉巧みに「こういう制度設計が必要なのだ」という無理な説明をしようとしている。
国税庁の説明も酷いが、解説サイトを見ても似たり寄ったりのものが非常に多い。
いくら「漫画」による説明や「図解」しようとしても理解が出来る訳が無い。
そもそも図や絵でそういったゴマカシを説明できるわけもなく、結局言葉で押し切ろうとするのだから無理な話だ。
結果、頭が拒否する。「言っている意味が分らない」「いやいや、そんなの必要ないだろう。」「その理由はおかしいだろ」と。
真に理解しようとする頭があれば理性が普通に拒絶して当然だったのだ。
最後に
理解云々に関係ない話を最後に書いておく。
一般国民には関係ない、事業者だけの問題、それも一部の、と思っているかもしれない。
それも大きな間違いである。
これによって確実に(同じ消費経済規模なら)消費税収入は増加する話である。
「なら良い話ではないのか」というのはあまりにも脳天気なのか、お国に献身的な人なのか。
その収入分は誰が払うのか。当然、最終的に消費行動を行う全国民である。
要するにこれからさらに続く”値上げ”ラッシュにこれを要因とするものが紛れ込んでくるという話なのである。




最近のコメント