石原環境大臣が「金目」発言で大騒ぎになった、福島の「中間貯蔵施設」問題である。
マスコミの報道も酷いものだった。
「金目」発言問題自体も確かにひどいが、この施設自体の杜撰さについて全く触れないで金目問題から政治問題にすり替えて報道していたマスコミもひどい。
そのことを慶応大学の金子教授があるラジオで話題に出していたのでそれを交えながら書いていく。
汚染土運び込みの現実感
6月20日の大竹まことゴールデンラジオ「大竹紳士交遊録」での金子勝(慶応教授)の発言から。
ポッドキャストで配信されているので必要な方は聞いて欲しい。
少なめに見積もっても全部で汚染土が2500万トンはあるとする。
2500万トン÷10トントラック=250万台
3年(900日)で搬入するとして(各地で詰めたあの袋は5年ぐらいしか持たない)
250万台÷900日=2800台/日
ラジオでは「現実味がない」「算数やれよ!」と言っていたがその辺はどうなのか。
10トントラックでのべ250万台であり、一日に2800台は動く計算になる。
さらに進めれば一日10時間として
2800台/日÷10時間=280台/時間
一時間に280台は行き来しないといけない。すごい数字だ。
ただし処理場はなんと16平方km、正方形なら一辺4kmもの広域になる。
この広域に280台トラックを均一に並べると235m四方ぐらいになる。
一処理場の大きさはどの程度か分からないが荒唐無稽な数字ではない。
前提としては処理場を順次作っていくのはダメで、一気にある程度の数は作っておかないと間に合わない。
そもそもその中の道の作り方やそこに入るルートは十分確保できている必要はある。
一時間に280台と言うことは、一台あたり12.8秒しかない。
仮に一台しか通れないゲート(道)があれば13秒で一台通しても足りないのだ。
なお、この広さに土を均一に積んだとしたらどの程度の高さになるのか。
16平方km=1600万平方m
2500万トン÷1600万平方m=1.56トン/平方m
一平方mに1.56トン積めば良い。
土の比重はあるが、水と同じ1とすれば1.56m程度。
まあ、数mといったところだろう。
中間貯蔵施設という「問題先送り」
原発関係では常態化している「問題先送り」である。
30年以内に最終処分場に移すらしいが、馬鹿馬鹿しい空手形である。
法律に書いてあるなんてなんの足しにもならない。
比較的若手議員の部類の石原環境大臣ですら30年後は87歳。
とっくに政界から引退、亡くなっていても不思議ではない年齢だ。
官僚も30歳以上の方は全員退職後。
官僚すら30歳以下の若造が意見を言えるはずもなく、ましてや議員など40歳でも若輩という構造で、まさしく若者へのツケをここでもしている。
最終処分地は福島県外へ、なんていうが、これもいつぞや「基地移転は最低でも沖縄県外」といった某総理となんら変わらないほどの無責任さではないのか。
30年後(このままの延長ならば)なお汚染が収まらない福島県から、さほどでもない県外に、4平方kmもの場所を確保して、これだけの大容量の土壌を運び出して移動できるのだろうか。
当り前だが運び込んだ時と同じだけのトラックの台数がまた動くのである。
施設の安全性とは
公的な資料として環境省関連のホームページに以下のものがある。
https://josen.env.go.jp/material/pdf/dojyou_cyuukan.pdf
あちこちツッコミどころ満載、というか杜撰としかいえないひどい書類だ。
書類がひどいのか計画自体がひどいのか知らないが、よくこんなレベルの資料で納得するものだ。
まあ、それが「金目」というものなのだろう。
施設の安全設計(13ページから)は「これのどこが安全設計?」と目を疑う。
というか、ツッコミどころがありすぎる。
「覆土により飛散・流出を防止し」とあるが、覆土とは一般に「土をかけるだけ」である。
百歩譲って踏み固めたとしてそれで飛散流出を防止できるなんてどういう理屈だろうか。
シートがけについてもいわゆるブルーシートだろうから、5年と持たないでボロボロになる。
一時的に雨から覆い、表面流出を止められるだけである。
8000Bq/kg以下の土については基本的に野積み、放射性物質は水などにより流出し放題のようだ。
モニタリング設備はあるが、じゃあ線量が高いからなにかできるか、といえば何もできない。
水処理設備があるそうだが、そんなもの追いつくわけもなく容易に流出する。
8000Bq/kg以上の土についてはもうすこし浸水性の少ない土の上などで管理するが大差ないだろう。
地下水モニタリング設備に至ってはなんの意味があるのか分からない。
危険値が出たところで何ができるのだろうか。
放射物貯蔵施設についても「濃度が10万Bq/kgを越える」のは屋根付施設にいれるようだが、ではそれ以下のはどうするのか。説明がない。
「施設周辺の空間線量率について」に至っては何を言っているのか全く理解できない。
どうやら汚染が酷い場所に作るわけで、作る時にその地域を除染作業をするので結果として低減となるのです、という理屈らしい。
もともと汚染が酷すぎて除染をすることをギブアップした地域であって、むしろ施設を作ることで除染するのだからありがたいと思え、ということなのだろうか。
現実にはそうなのかもしれないが、もはや基準が無茶苦茶で酷い話である。
地震津波自然災害対策
地震津波対策は、あの地震を基準にしている。まあ、それはいい。
高濃度廃棄物を入れる廃棄物貯蔵施設や減容化施設は津波が届かず地震の影響を受けない施設にする、のであるからそれは良い。
しかし汚染土を置く施設については全く触れられていない。
つまり津波で汚染土を全部かっさらって海に流れても「それはしょうがない」ということになる。
洪水雨水対策については、想定は過去15年間の雨水量で設計するという。
日本のそこかしこで「記録的…」「観測史上最大」「何十年に一度の…」が多発している昨今で15年というのは明らかにケチった設計と言うことだろう。
つまり20年に一度の豪雨で土やそれに伴い大量の放射性物質が流出しても「それはしょうがない」「想定外」ということなのだろう。
また台風や竜巻に関する言葉もない。
安全性とやらを含めてこの施設レベルでは「新たな汚染流出発生源」になるだけの話にしか思えない。
土の減容はしない
可燃物については焼却して減容化はさすがにするようだが、土や廃棄物についてはただ貯蔵して放置するのみの計画である。
問題としているセシウムは30年程度では半減しかしないわけでまた通常に使える土になるまでは程遠い。
土を減容する技術は実はある、と同じ番組で話をしていた。
セシウムは600度程度で揮発するので1000度程度で熱してそれを回収する、結果、土からはセシウムが抜ける。
実証実験も行われており、無論ゼロにはならないが普通に使える許容以下にはなる、とのことだ。
しかし当然その施設は金がかかるわけで、やりたくないということなのだろう。
1000度というとダイオキシン発生防止の高熱ゴミ処理施設よりは高く、鉄やガラスの溶鉱炉よりは低いというレベルだろうか。
問題はこのような広い施設を維持管理するわけで、それは国税が投入されることだ。
膨大な広さが必要となる原因である土を高温処理で除染し減容すればそのコストが激減するのは当然の理だ。
放射性物質を撒き散らした東電がその処理施設を作らずに、そのツケをまた血税によって負担させられているという構図である。
ここでも「原発のコストを血税に転嫁してごまかしている」という酷い構図がまた生じているのである。
この施設によって「高額の補償金を血税から出す」「特定地域の雇用を血税によって確保する」という原子力ムラの典型的構造の新たな形が作られたということなのかもしれない。
原発事故による反省どころか「焼け太り」の構図にすら見えてしまう。
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