規制緩和とはむしろ逆行
三木谷氏の発言などで注目を集めたネットでの薬販売の規制緩和問題。
マスコミではあたかも規制緩和が進んだような報道がされたが、実態はむしろ逆で規制が強化されてしまった、ということである。
私もこのあたりはすっかりと騙されていたが、ネットのおかげでぽつぽつと情報を見るようになってきた。
みんなの党代表の渡辺喜美氏もテレビ番組で明言していた。
おそらくは殆どの人は知らずに過ごしているのだろう。
法案確定前は規制がなくなっていた
薬のネット販売についてはその権利について訴訟が行われており、最高裁で判決がでている。
対面販売についての正当性は認められず、ネット販売を規制する妥当性は無く、販売行為は問題が無いという司法判断が出ていたのである。
大ざっぱに規制をするほうからみれば「無法状態」になってしまったのである。
現状では司法により認められてしまったのだからなにか手を打たないといけない。
もう一度法律を定めてしまえばその司法判断は根拠を失うので、どこかで法論議をすべきだと考えるのは当然である。
規制を取り戻すために
そこでアベノミクス・規制緩和委員会というものに目をつけたのであろう。
官僚というのは本当に狡猾である。
あたかもいままで薬のネット販売は規制にがんじがらめであったかのような一般認識を利用して規制緩和を行うという世論の流れを作った。
巧妙なマスコミの情報統制の一つと言える。
ここでも記者クラブやら省庁からの情報を鵜呑みにする、鵜呑みにせざるを得ないマスコミの弱さが出てしまった。
当然この情報の発表先は厚生労働省であり、既得権側である。
繋がっている既得権者は病院(開業医は経営者と医者が同一であるのは普通のことである)やその隣の処方箋薬局を含めた薬局とそこに勤める薬剤師である。
直接的、間接的に医者や薬剤師の既得権保護、そこまでいわなくとも市場や職場保護である。
当然ながら医師会やら薬剤師会やらの繋がりもあり、族議員の代表格である。
いま、選挙法違反で摘発をうけ、東京都知事まで巻き込んだ騒動になっているのも、その大元は病院の経営グループである。
ちなみに医師会や薬剤師会は人数はともかくとしても献金が半端ないそうで数十億にものぼるらしい。一人当りの計算はしないほうが精神的によさそうだ。
規制緩和したのは実は一割程度
そもそも薬とは大別して“処方箋薬”と“市販薬”がある。
それ以下のところで特保やら医薬部外品やらあるがその話は除く。
この処方箋薬の扱いが根本的に問題だったのである。
話題にも上らなかったのもおそらくは厚生労働省の情報操作のひとつともいえる。
薬市場規模という点で言えば市販薬を1とすれば処方箋薬は10あるという。
市販薬の規制なんかどうでもよくて処方箋薬の解禁が重要だったとさえいえる。
今回の報道では規制対象は数%で数える程の品種のみであり、ほとんど規制緩和となったような印象操作が行われたが、実際には9割が規制対象のままで緩和されたのが1割程度、というのが真実だったのだ。
上で述べた司法判断によって薬全般を規制することができなくなっており、処方箋薬も例外にはならない。
それではまずい。放置していれば既成事実化してどんどん広まってしまう、と官僚達が考えても当然である。
そこで話の焦点をうまくずらして解禁する薬を定めようとしたのである。
逆に言えばそれ以外は規制対象という論理である。
規制緩和の流れの中で規制強化をしれっとやったのだから驚いてしまう。
議論の中で、市販薬について“強い薬”のいくつかを規制対象としている。
その論拠のひとつとして、元は処方箋薬であったものを市販薬に“格下げ”したものであるということを言っている。
これも実に巧妙な論理であり、処方箋薬ははなから規制対象であることを印象づけるのが目的だったのでは無いのか、と勘ぐってしまう。
更に言えばこの論理自体もおかしいのである。
処方箋薬こそ安全
処方箋薬は医者から「これを使ってください」といわれて買うものである。
医師が病状やら体調やら副作用やら様々な問診を行った上で判断を下し選定されたものであり薬剤師が選定する余地はもはや無い。(そうでなければ処方では無い)
その処方に当たって注意点なども当然説明を行う。
薬剤師は処方にあたって間違いなく出すぐらいが仕事になっている。
いやいや、他の薬の飲み合わせとかアレルギー確認とかしているのではないかというが、それはむしろネットの方が確実にできる。
販売履歴も残っているし個人情報登録をしておくことで本人が言い忘れそうなことも確実に確認できる。
実際に服用している薬を全部覚えているとも限らない。
例えば薬局の対面販売で市販薬を買う場合に、処方箋薬をしっかり聞き取る例があるのだろうか。
なにかの治療で大量の薬を服用していて、単なる風邪で風邪薬を買うような場合だってあろう。
個人情報への踏み込みになるので一介の薬局の薬剤師はそこまで踏み込まない。
しかしネット販売なら履歴さえあれば薬剤師によるチェックはもちろん自動チェックさえできるかもしれない。
適切な風邪薬を選ぶ参考にもできるだろう。
むしろ処方箋薬も含めてネットで買ってもらった方が安全な方向にいくとすらいえるのだ。
役人の五感をフルに発揮するという論理
厚生労働省などは対面販売の重要性を“真剣に聞いているとわけがわからなくなる”説明をしかできていない。
言葉を色々言い換えても、対面販売で五感をフルに発揮することが重要だとの一点しかないのだ。
ここで勘違いしている人がでるのだが、ネット販売でもきちんと薬剤師がいて管理販売している。
きちんと書面で説明も行っているし電話での応対もしている。
もしその点で疑問や問題があるのならそこを出店に当たっての要件としてきちんと法制化すれば良いことである。
この展開で私が問題に思うのは、薬剤師にそんなスキルを求めて良いのか?と点である。
厚生労働省は「五感をフルに発揮して」という。
薬剤師という資格にそんな試験があるのだろうが。
資格として対面販売のスキルという項目は少なくとも無い(実務とやらに入っているようにもみえるがペーパーテストの範疇である)
メンタリスト的な要素が必要だし、少なくとも面接試験は必要だろう。
というか、そんなのを試験できる試験官がいるとも思えない。
国会では
厚生労働省と自民党はとりあえずタッグを組んで推進していたわけだ。
これもいつもの光景である。
では野党のチェックはきかなかったのか、という話になる。
委員会での野党枠は各党二人程度だったという。
党人事としては当然ながら医療問題に詳しいものを出すわけであり、各党にはたいがい薬剤師や医師の資格を持っている人がいて選ばれるだろう。
ここまでいえば分かると思うが今回の話題でその人達は“既得権益”側の人間なのだ。
どんなに差っ引いてもこの流れに少なくとも反対はするとは思えない。
さらに多少の疑問を持っていてもスルーという大人の対応をするだろう。
いうまでもないが自民党多数なので一人がドンキホーテを気取ってみても容易に潰されるのは目に見えている。(まあその前に党幹部から外されるだろう)
かくして無風状態で厚生労働省の思いのままに事は進む。
パブリックコメントやら一般意見徴集など横に流せば良いだけのことである。
岩盤規制打破はどこにいったのか
アベノミクス、岩盤規制打破などといって逆に官僚に上手く利用されたのがこの顛末であったというのが実態だったようだ。
三木谷氏がどうこうなどほんの些細な話なのである。
特定秘密保護法案も構造が同じに見えてならない。
理念やら方向は妥当で「やるべき」という世論を含め流れを作っておいて、実態はうまく官僚が動ける、また既得権益を確保するという法的枠組みにしてしまう。
国民はまんまと騙される。
さすがに特定秘密保護法案は様々なことが露見して、最後は強行に押し切ってしまった。
大分印象が悪くなったが、一方で監視機関の設立など“焼け太り”を獲得ができている。
これで少しは安倍内閣の支持率が急落すればまだましなのだが、なぜかどこも世論調査を行おうとしていない。
自民暴走を許す布石は、参議院選挙の前にマスコミが妙に「ねじれ国会」という言葉を連呼していたことがあったとおもう。
私は直感的に不信と不安をもって少なくとも自民党にいれることはすまいと思っていた。
「ねじれ」というのはネガティブな印象を持つが、「チェック」システムが存在するという面も持つ。
くしくもその不安が的中してしまい残念である。
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