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2013/04/20

汚染水海洋流出は10年後「壁で防げる」…東電

リンク: 汚染水海洋流出は10年後「壁で防げる」…東電 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞).

漏水が最も多かった2号貯水槽の汚染水約120トンが、法令の濃度限度(1リットルあたり30ベクレル)を上回る濃度で海に流れ出るのに、最短でも約10年かかるとする試算結果を、原子力規制委員会の専門家会合で報告した。

 この結果について東電は、敷地から海へ地下水が漏れるのを防ぐ遮水壁が2014年度に完成すれば、海洋への漏出は防げると説明している。

この記事上で見るかぎり、東電の説明は論理的におかしい。
とりあえず文章を追ってみよう。

まず、「放射能の地下水経由での漏洩は既に起きている」
これの否定はなんらしていない。
「海への流出」が「法定の濃度限度」を上回っていない、というだけの話である。
なんら対策を打たねば、年を追う毎にどんどん濃度が上がっていき10年で法令の限度を超える、というのがJAEAの見立てのようだ。
この10年という長さもどういう根拠で出したのかわからんし、私の感覚では疑問に思えるのだが、素人感覚なので置いておこう。

それに対して東電は「遮水壁が完成すれば」というたらればを言っている。
単純に考えればわかることだが、地下水を敷地内から漏らさないような“壁”を作るというのは極めて困難な話だ。
とりあえず海側の方に壁を作るようだが、当然水なんかどこかで止めても迂回するし、そもそも地下水脈がどれだけの幅で流れているのか把握しているのだろうか。
常識的に考えてそんなものは把握できるわけがない。
つまり「底」を含めて敷地内をプールの中にいれるようなイメージで遮水“壁”を作らねば叶わぬことであり、(建築物の)基礎を考えれば不可能なことである。
「壁」と表現しているからそういうものを想定しているとも考えられない。

つまりできっこないことを2014年中にやると“また”言っていることが問題では無いのか。

そもそも遮水壁を作るのは、漏らさない云々よりも汚染水の増加を減らすために地下水の進入を止める目的の方が重要ではないのか。

別の観点では「法定の濃度限度」自体の疑問視も当然されている。
この濃度制限は「一時的な漏洩」で制限されていると考えるべきであり、今回の様な永続的な漏洩を想定して決められているとはいえない、という論点もある。
一般的に有害物質は濃度で決められている一方、自然消失がないもの(極めて遅いもの)については総量規制がなされている。
濃度規制というのは例えば莫大な水で希釈すればいくらでも放出できるという性質を持つからで、放出後にどこかの過程で濃縮されてしまえば無意味だからだ。

某番組で専門家が言っていたことだが、今回の汚染水問題ではフィルターで浄化はしているものの「トリチウム」が除去できないという問題があるということだ。
トリチウムというのは放射性を持った水素であり、水素と酸素が結合すれば水となる。
つまり水と殆ど同じ性質を持つ液体の放射性物質の存在が浮かび上がってきている。
これはβ崩壊という紙一枚でも防げる放射性ということなので、つまりはペットボトルにでも入れてフタをすれば安全なものなのだが、水と同じと言うことは体内に取り込まれ、体中を巡るのも容易であるということである。
また通常の水に混ざってしまえば分離することは現実的に(コスト的に)不可能である。
半減期は12年ということだから待つには長い。

別の番組である研究者によると、海での放射性物質の濃度の減少が想定より遅いという指摘をしていた。
一旦は流出しても時間経過により遠洋に拡がって希釈されるわけで流出元の沿岸あたりを定点観測すれば濃度は下がっていくのは当然の理である。
その下がり方が遅いということはどこからかの流入があると考えざるを得ないということだ。
つまり、未だに流出量は減っていても止まってはいないということだ。
汚染水の意図的な放出はしていないのだから、海に流れ込む地下水が原発敷地内を通過する時に汚染されてきているとしかない。
なお、汚染水が地下水として流出しているか、流れている地下水が汚染されてきているかなどということは、自然体系的観点からすれば些細な違いに過ぎない。

この問題の重要な観点は、原発事故の後処理が収束どころかまたひとつ重大(長期的)問題が噴出(露呈)したということだ。
地下水の存在が事故時の問題を大きくしている。
安全審査においては活断層ばかりが焦点になっているが、地下水脈の調査も必要ではないのか、という論議が出ても不思議ではない。
もっともいまやっている安全審査というのは「事故が起きないためには」という観点であって「事故が起きた時の被害拡散防止」という観点が弱いのは相変わらずだから却下されるかもしれないが。
ここも今の「安全審査」とそれだけを原発が運転を可否の唯一の根拠としようとしている、ひとつの問題と言える。

もう一つの問題点は、なぜかマスコミではあまり言葉が出ないのだが「トリチウム」という物質の存在が表立ってきたということ。
日本語では「三重水素」と呼ばれる。
水素自体ははご存じの通り自然界で最も軽い物質で常温で気体、燃えやすいというか爆発するようなものである。
燃える=酸素と結合して水になるということでクリーンエネルギーとして注目を受けている。
重水素も同様に酸素との結合で水となり、重水とよばれる。
これも水と同様の性質を持つ。
水はいうまでもなく地球上の半分以上を海という形で占めているものであり人間の体の半分以上を占める“物質”で極めて重要である。
しかも一部は血液という形で体中を激しく巡っているものでもある。
その水と同じ性質を持つ放射性物質というのは感覚的に非常に“怖い”。
他の放射性物質と同様に毒性はないとされるが、その体内への取り込まれやすさは他の物質の比では無いと考えられる。
ヨウ素は甲状腺に集中するということから色々といわれていた。
逆に言えばそこに濃縮されるということで体内に取り込まれたからこその健康被害が考えられる。
しかし重水はそういうことはないから、外界での存在濃度は一概に同一視できないともいえる。

これはどの放射性物質でも同じなのだが一定の濃度は自然界に存在する。
重水素や重水も宇宙からの放射線で自然に生じて存在しているものだ。
“不自然”なまでに濃いとなんらかの影響が生じうるということになる話だ。

ともあれ、考えれば考えるほど難しい問題だ。

ひとついえるのはこういうやっかいな問題がまた露呈されたということなのだろう。

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