iPadは革新的という言葉が踊っているが、決してそうでもない。
iPadはiPodの成功が背景にあるのは間違いない。
今でこそiPodはトップシェアを揺ぎ無いものとしているが、最初からそんなことはなかった。
少なくとも日本でiPodが伸びたのは第三世代と呼ばれる機種から。
ここで何が違うかといえばMac/FireWire(IEEE1394、iLINKといった方がとおりがよいかもしれない)でしか使えなかったのをUSB対応でWindowsからも使えるようにしたことだ。
iPodはiTunesがあってこその機器である。
WindowsでiTunesを動かし、iTunesを無償でばら撒いた。
Windowsで動くAppleのソフトということでとりあえず試して、まんまと嵌められた人は多くいるだろう。
iTunesも決して驚くような技術は入っていない。
リッピングも普通だし、曲名取得はGracenote Databaseを利用するといった従来からある手法。
この時は音楽配信もなく音源はひたすらCDからである。
しかしながら色々な機能が見事にきれいに統合されており非常に使い勝手がよい。
iTunesがあってiPodがある。というスタンスというほどの存在だ。
他のメーカーでは、そのプレイヤーの付属おまけソフトというような感じだったり、
市販のソフトを買い取ってその機種用にアレンジしてつけていたりとぞんざいだ。
ひどいのになると市販ソフトの体験版をつけているだけというところさえある。
そこが大きく他のプレイヤーと異なる。
そのバージョンアップの姿勢からもiTunesを中心(軸)に回っていることが良く分かる。
だからこそ安心ができる。
CDから取り込んだり、購入したりした音楽はこの先のiPod(とファミリー機器)で使えるということが保証されているようなものだからだ。
実際にiPodの各種モデルやiPod touchやiPhone、iPadもこのファミリーであり、利用をすることができる。
ハードは所詮壊れる。
先端機器でもあるこの種の機械は壊れやすい。
持ち運び、歩きながらでも操作するようなものであるからなおさら危険性は高い。
そうでなくとも、新機能が欲しくなったりファッション的理由からも買い換えたりする。
ハードを買い換えると、新しくついていたソフトが従来のものと互換性がなかったり、データの変換にひどい手間がかかったり、下手すると使い勝手というかソフトそのものがまったく異なって使い方をまた覚えるはめになることさえある。
そんなのは馬鹿げているはずなのに平然とそういうことを強要していたのが今までだ。
それを変えたのがiTunesとiPodともいえる。
さて、話を戻そう。
最初はCDからのリッピングだけだったのがPodcastの配信、iTMS(MusicStore)からのダウンロードとiTunesが進化をした。
Videoが追加され、iPod touch/iPhoneではゲーム等のアプリも動かせるようになり、iTunesでも管理できるようなる。
扱うものが音楽だけではなくなったためにiTSと名前を変えた(Musicをはずした)。
touch/iPhoneでは、それ自体でもダウンロードできるようになっているが、iTunesからも相互利用ができるようになっている。
これらの進化は一朝一夕にできたものではない。
特に日本ではiTMSの立ち上げにはかなりの苦労があったらしく、実際に開始がかなり遅れていた。
もちろん本国でも各音楽会社を説得するのには時間を要している。
ジョブス氏のカリスマがあってこそ実現できた、と云われるほど難事業だったようだ。
iPadはこれらの積み重ねがあってこそだ。
そしてこの積み重ねの中で電子書籍が加わることになった。
この流れで注目すべきはMusicStoreを立ち上げた時点で決済システムを導入している。
それがアプリ配信システムの導入、有料アプリの導入のスムーズさに繋がっている。
通信費支払いと併せられる携帯電話と異なり、PC主体の環境では有料アプリというのは実は精神的な敷居が高い。
反面、有料アプリという形態がないと優秀な人やプロの仕事によるソフトがなかなか供給されない。
個人が洒落で作ったソフトも良いが、金をかけて作ったソフトもあってこそコンテンツ事業として本当に成功となるのではないか。
先だって音楽の有料配信という時点でクレジットカード番号を握れたことは大きい。
電子書籍でもいままでとはちょっと違ったアプローチをしている。
それは非常に細かいように見えて実は成功への重大な要点を押さえていると思う。
1.今までの書籍には拘らずに、これからの書籍で考えようとしていること。
過去の作品を電子化しようとすると著作権処理で非常に面倒になる。
その処理の経費は価格へと転嫁され、電子化のメリットを商品としてなくすだろう。
実際にいままでの電子書籍は製本したもののほうが安いという結果となっている。
値段の高さにはもちろん他の理由もあるのだがそれは後述する。
2.雑誌を中心に置こうとしている?
週刊・月刊雑誌からというアプローチはある意味良い観点だ。
価格的にも手頃であること、たいがい毎月購入するので継続した収入が見込まれること、万一コピー禁止が破られても被害が少ないこと、1と関連して著作権的にクリアしやすいこと。
実験的な試みがやりやすいということも大きい。
アンケートや懸賞の類はまさにオンラインでできるだろう。
オンラインショッピングなども可能とするらしい。
動画を入れ込んだりもできる。
表紙を動画にするのはややギミックといえるが、とりあえずツカミという点では大きい。
インタビュー記事などは一部始終をそのままインタビューの録画映像を入れるということもなされているようだ。
大概の雑誌は読者層をかなり絞り込んで発行されている。
電子化検討段階から読者層が比較的情報感度が高い人を狙えるから購入層としても適切だ。
とりあえずMac Fan誌が電子化されたがこれも先陣を切るのは当然といえばそうだが購入層として大きく期待ができる。
情報鮮度という点でも大きい。
当面は紙での出版との兼ね合いで難しかろうが、電子一本でできるのならば、原稿の締め切りから発売までの期間を大幅に短縮できるだろう。
最近は電子入稿で印刷までの期間はかなり短縮はされているとはいえるだろうが、流通などを考えるとどうしても限界がある。
また雑誌というのはゴミ出しが面倒だ。
書籍は比較的保存している人(もしくは売ってしまうか)が多いが、雑誌はたいがい捨てるしかない。
そもそも紐で縛って出せなどというおよそスマートではない手法を強要される。
新聞も同様なのだが、私が新聞をとるのをやめたのはこのことも理由のひとつだ。
一方で捨てるのに躊躇したりすれば溜まる一方で部屋を圧迫する。
紙メディアと同様以上の情報が得られて簡単に捨てられるのなら電子書籍のほうが良いと思っても不思議ではない。
3.ネット配信を基本とする
価格には流通・在庫の費用が含まれる。
再販制度のある日本ではなおさらその負荷は高いだろう。
ところが従来の電子書籍は本屋で売られるという書籍で同じ流通に乗っていた。
パッケージを含めると下手をすれば本よりも大きい。
価格も本より売れないことは明確だからという理由もあろうが本より高い設定。
さらにパッケージで売ると中古売りや不正コピーの問題もでてくる。
ネット配信によってこの問題も解消できる。
iPadでダウンロードして、それを他のiPadに移す手段はないからだ。
もちろんiPad/iTunesをクラッキングすることで可能になるかもしれないが、かなり困難だし、iPadのソフト更新によってそれを防ぐことも可能になるだろう。
所詮はいたちごっことはいえ従来よりははるかに難しくなるのは確実だ。
4.価格を安く設定している
あくまで類推だがこれはApple社の一種の指導があったのだと思う。
流通在庫コストはわかりやすい説明のひとつだと思う。
しかし従来の書籍より安く設定しないと売れない・事業が立ち上がらないということで若干の無理やコンテンツ供給側へのなんらかのベネフィットがあるのかもしれない。
一定数の買取保障なども考えられる。
間接的にApple側が負担をしている部分もあるのかもしれない。
配信費用の減免などもあるかもしれない。
いうまでもなく従来より安く、より便利なものであると広まれば、電子書籍は広がる。
広がれば元締めであるApple社の利益は非常に大きい。
5.電子書籍に特化した機械ではないこと。
当たり前だが電子書籍専用リーダーであったら5万とかそんな価格が受け入れられる訳がない。
他にもいろんな機能がありその中のひとつの機能として電子書籍をいれているに過ぎないからだ。
今までの電子書籍リーダーはその高価さゆえに敬遠されてきた。
いや、デバイスの価格から考えればむしろ安い価格なのかもしれない。
しかし、それでできるのは本を読むことだけ、つまり商品としての価格とみればとんでもなく高い。
考えてみれば専用リーダーは存在は不可能だろう。
もっといえばそれでいて電子書籍ならではメリットを打ち出せていなかったこと。
iPadではいわゆるネットブックとしてみれば上級の部類に入る。
パソコンよりは低機能だが、値段や重さ、タッチパッドや動画再生機能などを含めて考えれば必要十分ともいえ、むしろ安い価格として設定されている。
ストレージはSSDだしXGAで程よい大画面でのタッチパネル、700g台と軽量で、電池の持ちもほぼ一日使っても大丈夫。
しかもレスポンスが非常に良い。
製品としてみれば非常に良くできている。
このあたりをつきつめた製品は高価になりがちだからだ。
最初の購入層としてはiPod touch/iPhoneあたりのリピーターだろうが、その金銭感覚としては高いというほどでもなく妥当か安いと考えるのではないだろうか。
電子書籍とは言っているが、どうも従来の電子書籍は、従来の書籍の電子化といった枠にとらわれていてそれ故に駄目だったのだと気づかされる。
昔読んだ作品をいまさら電子化したからといってそれをお金を払って読みたいと思うのか。
iPhoneで携帯電話を再定義したというが、iPadは書籍を再定義しているのかもしれない。
iPad以外が絶望的でiPadが凄いのは、繰り返すがiPadまでに至る“仕事”の量がハンパではないからだ。
長期的にコツコツと積み重ねによるカイゼンが日本の製品の美点といわれていたが、実はApple社こそがそれを行ってきていた。
iPadはジョブスの展望、夢でもあったのだともいわれている。
その夢に向かって事業を続けてきた結果が、このiPadとして具現化されているのだろう。
iPadに対して黒船やら革命やらいわれているが、Apple社にとっては必然ともいえる。
他のメーカーが夢ではなくて目先の事業だけを追って、ただ商品を出してきただけではないのか。
とはいえ、iPadがどれだけ広まるかはまた別の問題だ。
しかし実際にiTSがCDの売り上げを上回ったりしている。
日本でも着うたはCDの売り上げを上回っている。
流通の電子化の流れは確実なことであろう。
そして今回の電子書籍は魅力を放っているのも確かなことでもある。
書籍の電子化というのは日本でもかなり昔から研究はされており、製品化に至っている。
しかしどれも失敗として終わった。
主要デバイスを握る日本の優位性はあったはずだ。
製品化したが事業として成立しなかった。
それはなぜなのか。
その点について日本のメーカーはどう考えているのだろうか。
日本のメーカーの凋落といわれる理由がみえてくるのではないだろうか。
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