松下のジャスト提訴に感じる憂鬱
なんとも大人気ないことだ・・というのは簡単だが、実はとてつもない危惧への幕開けを感じる。
ソフトウェアというのは個人が作っているものが実に多い。いわゆるパッケージはたいした数はない。
むしろオンラインでそれこそ星の数ほど存在している。
個人が自分のために作り、ついでで無償で提供されるものも数多くあり、毎日のように大量に公開されているとっても過言ではない。
おそらくその数を把握することは不可能であろう。
また有料で提供されているものも多く、小遣い稼ぎから生業にしている人もいる。
ほぼ同一のものがパッケージソフトとして販売されるものもある。
ソフトウェア特許というものはこれらすべてが提訴の対象となるわけである。
それは無償であろうが有償であろうが無関係。公開の差し止めで済めばまだしも賠償請求を求めることも可能である (特許権利者の気持ちひとつにすぎない)。
特許は公開されており誰でも閲覧することが可能ではある。
ではソフトウェア技術者が自らの作品が成立している特許をすべて調査してから公開することは可能であろうか。現実問題として否である。
特許は文章特有の難解さ(曖昧さの解釈)もさることながらその数には膨大なものがある。すでに存在するもので数百万はくだらない。
年間にひとつの会社だけで数万を超える数が出願されている。検索という手段をもってしてもかなり困難であり個人の手に余るものがある。
また任意の懸案に対する検索は無償というわけには行かない。
ちょっと大きな会社であれば専門部門が置かれているし特許に詳しい弁理士などと契約を結んでいることはごく普通のことであり、
それをもって技術部門などの負担を軽減する役割を担うほどの負担なのだ。
無論、特許案件に対する交渉なども彼らプロの手に委ねられている。
こんな状態で個人が勝てるわけがない。
多くのサンデープログラマーを含むオンラインソフトウェア作家にとっては危機的状況になる。
UNISYS特許で公開を取り下げた作家も多々いたが、あれはまだ期限が先に見えていたからましだ。
今回はこれからもこのような状況が多発しえることを暗示している。
より危険度の高いパッケージ系についても零細企業の多いソフトウェアハウスも決して少なくはない。
そしてそのような会社ほど非常にできに良い「切れのある」ソフトであることが多い。
彼らを苦境に立たせることになる。
本来は特許は装置や機器、薬品など膨大な金銭を投じて研究開発され製造も大規模な会社によって行われていた。
それ故に特許権を与え独占を許可し先行独占利益により開発費を回収させるという目的がある。
別の観点で言えば結果的には大企業同士の喧嘩の道具といっても過言ではないと思う。
個人が訴えられるということはほとんどありえない話である。
ところが今回のような訴訟が今後も起こるようであれば非常に危機的な状況に変化しうる。
たとえば既に世の中に定評のあるソフトがどこかにあり、あたかもそれのクローンのようなソフトを無料でばらまいて損害を与えた、
というのなら故意や未必を問わずある程度は訴訟されても仕方ないと思う。
その法的な根拠として特許を持ち出してくるのが本来の特許権の施行である。
しかし今回の訴訟ではWindowsソフトでは別に珍しくない手法で標準的手法ともいえる仕掛けをソフトに組み込んだのにもかかわらず、
その点について提訴され認められ差し止め処分の判決が下った(幸いにして実行はされないですんでいるが)。
そしてその点は争いになっているソフトウェアの特徴機能でもなんでもない。
松下の販売されているソフトウェアでそれを特徴とするソフトウェアは皆無である。
特許は知らなかったではすまされないにしろ納得がいくものではない。
ジャストシステムが業界トップシェアでなにがなんでも叩き落される立場にあるというのならともかくそうでもない。
むしろ独占禁止の疑いがありえるほどの数の多いマイクロソフトのOfficeシリーズで行われているのにも関わらずそれは看過されているが故にそれが侵害になっているとはなかなか認識できない。
特許の本来の趣旨でいえばまずたたくべきはもっとも侵害の数・規模の大きいものからであるためだ。
最高裁ではきっと逆転判決が出てジャストは無罪放免になると信じているが、もし仮に認められ、
差し止めになったとしたら暗黒時代の幕開けだ。ソフト業界だけではなくソフトの世界全般においてである。
知的財産国家、ソフトウェア国家どころか、草の根、裾野が根こそぎ断ち切られ、商業的に成立しうるものしか存在できなくなり、
結果として現在より貧困を呼ぶのは確実だ。
もし判決が松下の勝訴になってしまったとしよう、
松下がもし今後も同様な知的財産権を振り回すつもりなら、まずはマイクロソフトとの不公平条約ともいえる、
マイクロソフトへの特許に関する提訴の免除項目の排除をぜひともほかの企業の先陣を切って行って欲しい。
そうでないとマイクロソフトに特許を侵害されまくってもそれを黙認するという現状を甘んじて受けつづけるということで全くをもって知的財産を重視する会社などということはいうのは噴飯ものであるとしか思えない。
そしてその上で今回の件についてマイクロソフトときちっと争っていただきたい。
既に判例があるわけだから必ず日本の法廷で勝てるはずだ。当然差し止め請求を公平に行って欲しいものだ。
あまりにいいたいことが多くてとりとめもなくなってしまったがこれにて投稿する。
特許制度にはいろいろと不備があることは指摘されている。ソフトウェア特許というそのものに懐疑的な意見も存在する。
それらも含めて最高裁の結果がでてからまた改めて整理しそのときに書きたいと思う。
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