いわゆる「インボイス制度」だが、正式名称は「適格請求書等保存方式」という。
まずこのような俗称が先に立って正式名称を殆ど目にしないのが問題なのだろう。
私自身は「インボイス制度」から受ける本来あるべき姿、この言葉の印象からくる制度であれば問題は無いが、「適格請求書等保存方式」においては多くの問題を持っているから反対、ということになる。
この点で多くの国民が騙されているようだし、ネット記事やニュースのコメントを見ていると騙されている人がいると感じている。
2種類の税率への対応という嘘
この制度は軽減税率導入に伴い、この2種類の税率をキチンと明記すること、というのが本来の主旨のはずである。
よってこの点にのみ徹底をすればなんら問題は無いはずだ。
別にこの法律改正が無くとも、請求書や支払明細書等には税率が2つあれば税率を明記している。
そうしないと成り立たないのは自明だからだ。
その要件を明示して法律改正をしただけならなんら問題は無いし、反対も起きないだろう。
しかし、そうではないから大問題、大反対、大反発、怒りが噴出しているのだ。
引き合いに出される「欧州はインボイス制度で・・・」とか都合の良いときだけ欧州などを引き合いに出すが、その欧州だってこの程度で終始しているだろう。
日本の「適格請求書等保存方式」反対とは話が違うのだ。
その問題点について明確にしていきたいと思う。
消費税とはそもそも何だろう
国民が消費者が払っている、というのはまず嘘である。あなたは消費税を納税したことがあるだろうか。そんな国民は一人もいない。
「いやいやお店で払っているでは無いか」というかもしれないが、納税はしていない。消費税相当分を商品の対価の一部として払っているだけだ。
これを「お客様からお預かりした・・・」などという摩訶不思議な言葉でごまかした。これが自民党竹下政権下で導入された消費税で使われた言い方である。財務省が撒き散らした洗脳にすぎない。
概念、思想的にはそうだと言い張れるかもしれないが、法律的、制度的にはそんなものは存在していない。過去にこれらの点が争点となったが、裁判所において審議され、この考えを否定されている。(従って免税業者等における益税などというものは存在しないとされた)
では消費税の実態とはなんなのか。
財務省のホームページにおいて消費税という言葉は実は言葉を潜めている。どうやらこっそりと「付加価値税」という言葉に置換えられている傾向がある。
欧州の消費税税率は・・・等という言葉も出るが、欧州には消費税は存在しない。そこでいわれているのは付加価値税である。
なぜ付加価値税といわなかったのか。これは付加価値税というのは新たな法人税であって、企業に対する新しい負担として猛反発を食らったらしい。自民党政権下において法人税をどんどん下げて消費税を上げているのは周知の事実であろう。
法人税を下げることは自民党の利権そのものなのだから、それに反することはできない。
それを国民が負担する消費税という言葉にすり替えたのだ。
ところが消費税、つまりものを買ったら税金を負担する、と単純な話では、事業者にとってはおかしな話になる。
例えば1100円のものを売るために880円で仕入れました。という事例で考えてみよう。
1100円のうち100円が消費税だが、預かったのだからこれを事業者として納税(支出)せよという。
一方で仕入れた880円のうち80円は消費税だが、80円という消費税分も支出している。
これはどう考えてもおかしな話では無いか。仕入れ先の納税もみれば二重取りだろうと。
しかしこれは売上税と考えれば売った分の税支払なのだから問題ないとも言える。
実際の消費税税制ではどうなっているか。
納税すべき100円から80円を引いた20円納めれば良い。
引いた80円を控除や還付と言う表現を使う。
この考え方は付加価値税と言われるものに近い。事業者が付加価値をつけた分に課税するという考え方だ。
1100円から880円を引くと220円となる。差額220円が事業者の付加価値分という。
220円の1/11が消費税分となるので20円納めれば良い。
これが「欧州でもやっているでかはないか」といっている付加価値税の考え方である。
ちなみに消費税の計算において1/11のような計算方法も認められている。
考え方の違うが実態の違う二つのやり方を混同しているから話がおかしくなるし、財務省他はわざと消費税導入以後、未だに混乱させてきており、今回も混乱させていると言える。
適格者登録番号
納税事業者に対しては財務省からこの番号が割り当てられる。逆に言うと納税しない事業者、免税事業者に対してはあり当てられない。
「適格者」というのは尊大な言い方でイラッとするが、要するに「納税事業者番号」である。
免税事業者は「非適格者」であるような言い方で、財務省のエリート意識が見え隠れする、と嫌みも言いたくもなる。
この番号が実質的に効いてくるのは先に書いた還付の問題である。
今回導入されたこの制度では、この番号を利用して極悪なことをしている。
仕入れにおいてこの番号のある請求書(取引の証明書)のみ還付ができる。
番号が無ければ還付が受けられない。この差は非常に大きく極悪にも程がある。
先に説明したように本来は仕入れ先がどうであろうが、売買した書類があれば、取引先がどうであろうが関係ない。
そして欧州を始め導入されている付加価値税の考え方でも関係ない。
しかし、今回の制度においてはこのような区別、そして差別に繋がるようなことをしているのが大問題であるといえる。
こんな番号の存在自体が大問題なのである。
インボイス制度廃止等とは言わない。適格者登録番号さえ廃止してくれれば良いぐらいの話だ。
そして消費税制度のためだけに導入されたこの番号により、大混乱と無駄な支出が行われた。
少なくともITシステムの改変を余儀なくされただろう。支払に感知るもの、取引先管理に関するものはすぐに思いあたる。
無駄なコストを負担させられ、担当者も余計な作業が継続していく。激怒ものである。
帳簿主義と請求書主義
自分が帳簿を持っていて、それに従って売り買いをつけて支払もする、というのが帳簿方式である。
なので月末締めとかそういう商慣習が一般的になっていたりする。
日本においては特に大企業やそれに繋がる中小企業などは帳簿方式で管理しているのが殆どだろう。
戦国や江戸時代の商人が帳簿の束を持っているイメージ絵があるが、そういう感じである。
電子化して即日決済すらできる世の中になっても相変わらず月末締で何ヶ月も後に支払うとかいう慣習が続いている。
一方でインボイス制度が基本としているのはインボイスの意味である、請求書を基本とする方式である。
請求書が売手から来て、それに応じて支払をする。
これは欧米では一般的であるようだ。
だから「インボイス制度」における請求書基準は当たり前だろう。
今回のインボイス制度による混乱はこういった背景もある。
帳簿方式でやってきていたのでいきなり請求書方式にしろといわれたって大混乱して当然だ。
「コペルニクス的転回」つまり天地が逆になってしまう話である。
いくら「地球が回っている」が科学的に正しいと言われたって、色々な仕組みが「天が回っている」のを前提に組まれているのだから、それを修正していくのはとんでもなく大変なのである。
さすがにこの点については財務省は譲歩しているらしく「売手が発行する請求書ではなくて買手が発行する支払明細等でも可とする」という見解を出している。
「え?そもそもインボイス(請求書)でなくてもいいのかよ」という話なのだかが、そこは拘らないらしい。笑えないジョークである。
まあ、大企業の圧力には屈したのか、本丸は適格者登録番号であって他はどうでもいいようだ、という雰囲気を感じる。
そもそもインボイス制度を本来の意味でやるのなら、何十年かけてこの「帳簿方式から請求書方式への転換」を推進していくべきである。
税制優遇措置や電子化も含めて何十年単位で推進すべき転換であるのにまったく手を打ってこなかった。
その転換を前提にインボイス制度を導入すれば混乱はかなり抑えられたはずである。
そして日本では中小企業や個人事業者が弱いのもこの発想が悪因である。
買手である大企業が全体の流れを支配しやすいのが帳簿方式、売手である個人中小が流れを支配しやすいのが請求書方式となるのが自然だ。
また、請求書方式が主流である海外各社が日本企業、日本を特異と感じてしまうのもこの点もあるのではなかろうか。法人税を下げる理由お一つとして「海外各社が日本に来るのを促進する」と主張しており、一方で法人税下げの弊害・不満が充満しているのだから、無視することはできない。
この観点からも本来やるべきことをスルーして、改悪を守ろうとするから悪法と言わざるを得ないのだ。
計算方法の厳密化
請求書(や支払明細)における消費税の算出などにおいて、いままでは結構ラフな話であった。
ところが今回からは個別の請求書基準になるため、厳格に指定されてしまった。
これがITシステムの変更を含め、様々なところに問題が波及し、大混乱をきたしている。
システムの変更が必要と言うことは当然コストがかかる。
せっかく過去にシステム化したのだが、たまにしか使わない部分については後回しとなり、予算や時間の関係で間に合わない、最悪なのは変更される見通しが現状立っていないという部分が出てきてしまった。
結果だけ言えば、過去にITシステム化したのに、また十数年前同様に手作業になってしまった、というものすら出てきてしまったのだ。
単体の手作業というだけなら、例えばエクセルプログラムなり、他の簡易システムで処理するのだが、全体の統合的経費処理のために従来システムと数字をリンクしなければならない部分があり、その部分の数字を手打ちしなければならないのかという絶望的な泥沼に嵌まりかけている。
随分と生々しい話を書いてしまったが、こういった泥沼になるというのは私のところだけでは無いはずだ。
恨み辛みがネットでは氾濫しているが、抜け出ることのできない地獄になっているのだから。
これもおかしな話だ。
付加価値税の考え方であれば、個別の請求書の消費税の算出などは関係なく、事業全体で得られた額と支払った額の差分で見れば良いだけであるべきだろう。
消費税だけ単体でやり取りしているわけでは無いのに、なぜ殊更消費税ばかりを重視するのか理解できない。
消費税重視の考え方であれば本体価格で考えれば良いだけだ。全くおかしな話だ。
要は財務省が救えねえバカ
財務省の弊害、ぶっ潰せ、という話は最近あちこちで噴出している。
この件もまさに財務省のど真ん中の話であり、極悪行政機関・財務省の典型例と言って良い事件だ。
救えないのは、本当のバカなのか、無能なのか、利権漁りクズ野郎なのか、いずれにしても擁護しようが無いという点にある。
いよいよ本当に財務省を解体、破棄しない限り日本は潰れるというのが目に見えてきている。
それが無理なら税務官吏を財務省以外にしてくれ。
一番現実味があるのは、各種保険料(少なくとも年金)も含め、一括して徴収業務を行う内閣府傘下とする歳入庁構想であろう。
これなら省庁再編の範疇である。
金の入りと出を両方とも管理する省にするから権力が強大になってしまう。強大化するのはごく自然だから、分離するのが自然である。
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