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2023/09/16

国を潰す、国力を削ぐインボイス制度

「インボイス制度は一般国民に関係ない」そんな政府公報をネットで見かけた。
私が指摘するまでのなく当然これは増税であり、一般国民の負担を増やすものである。
私はさほどネット動画を見ないので、それでも見かけたというのは由々しきレベルである。
政府がだんまりを決め込むのならまだしも「無害」であるような広告(つまりこれも税金を投入)するに至っては怒りしか起こらない。

今回はあえて怒りにまかせて書き散らかしていく。

だれがどういおうが、この制度は増税のひとつである。実際に「増収が見込まれる」と国会でも認められている。
特定の業種・職種を狙っての制度では無いのだから、税の増収があるということは回り回って結果として全国民からもれなく徴収されたものが行くわけで、国民負担が増えるのは当然である。

政府は「増税を目的にするものではない」と言い訳をしているらしいが、結果として「増税政策」にほかならない。
岸田内閣になってから頻繁に言われる「ステルス増税」と言っても良いだろう。

零細企業において、またスタートアップ事業、フリーランス、シニア労働に関しても言及している記事があった。
この記事にはまったく同意である。
グーグル検索でも上位に上がっている記事でもあるので是非一読願いたい。
欠陥あり!国をつぶすインボイス制度

当然ながらこの記事の宣伝をしたいだけではない。これ以外にもたくさん言いたいことがある。

例えばIT人材が足りない、リスキリング等という噴飯物の”提案”を総理がぶち上げるほどの体たらくの業界である。
この業界においてはフリーランスで活躍している人も少なくない。小さい事業者のホームページ管理とかオンラインショップをサポートしているのもこういう人達が多いのではなかろうか。また、大きな案件でも一時的に派遣会社を通じて需要に応じるケースもある。
不安定で安い収入だが免税事業者だから何とかやっている人も多いだろう。こういう人達も苦しめることになる。

通常は関係ないだろうと言われている大企業間の取り引きにも大きな影響(混乱)を与えている、という話をしたい。
一言で言えば「対応にコストがかかる」ということがある。
「企業のコストなんか知らん」などというのは脳天気にもほどがある。企業は慈善団体ではないので、回り回って商品の値段が上がるのは当然の理である。値段が上がるのは仕方ないこともある。しかし税務署の勝手な都合によるコストアップを我々国民が払うことを腹立たしくは思わないのか。

いわゆるインボイス要件、従来の請求書ではなく正確には「適格請求書」への対応が迫られる。

単純にこの請求書形式への書式変更などの修正が迫られる。手書き(エクセルで印刷とかも含む)で請求書を発行しているのなら、まあ、まだ良い。しかし普通は全て電子化、つまりプログラムの修正を迫られるわけである。
消費税の計算だけならまだしも「適格者登録番号」なる新たなデータ管理が要求される。
こんなくだらない番号のせいでシステム改変があちこちに発生するが現実なのである。

もう一つの大問題が「そもそも取り引き毎に請求書なんか発行していない」というケースもある。
また明細は別に発行しており、実際のお金のやりとりでは実際の支払い総額で行っている、というケースもある。

考え方としては「やり取りしている全書面(電子データ)を突き詰めれば問題ないことは証明しうる」という前提に取り引きをしている、というケースがあるのだ。

というか大手では日々膨大な取り引きがあるわけで、逐一請求書を要求(つまり管理)しているケースの方が珍しいのでは無かろうか。「注文書」の類で品目、数量、値段を明示する。納品時は「納品書」の類だけで品目や数量等の記載はもちろんあるが、いちいち金額ましてや消費税など書かれているわけも無い。納品書は運送業者が容易に確認できる形でもあり、運送業者経由で取引額が漏洩することを避けるという意味もある。
さらに代金の支払いも逐一納品即払いをしているわけがない。月毎にまとめたり、実際の支払いは数ヶ月遅れてというのが普通だ。
そのため、特に大きなところ同士ではお互いに管理しながら「支払残高」みたいな形で総額管理しているのが実態だ。

しかしながら、このインボイス制度では「売手(サービス)側が請求書を発行し、税額も明示すること」という原則となっている。
国税庁は「請求書という名称表記には拘らない」というような言い訳を用意しているが、それは字づらにおいてだけである。
簡単に言えば「販売(サービス)側が○○を発行し、税額も明示すること」ということには変わりなく、○○の文字はそれらしい名前なら何でも良いよ、というだけである。
さすがにこれはありえないので、各種書類を突き合わせて同等であれば問題は無い、という話もあるが、この判断が極めて難しい。
どちらにしろ、売手側か買手側がなんらかの対応を迫られることには違いが無い。
そして「原則売手側が発行すべし」となっているので負担は売手側がかぶることになる。
つまり最終的には弱い立場の売手側が今まで要らなかった「請求書」を要求されるようになる、ということになる仕組みだ。

長くなったが、要するにいままで問題なかった取引形態(商慣習)に手を突っ込んでグチャグチャにかき回されている感が生じているのだ。

さらに「契約書にあれば請求書は不要」などという言葉も、苛立ちをさらに加速させる。
契約書を結ぶのにどれだけのコストがかかるというのか。お互いにギチギチのせめぎ合いの中でようやく妥結にこぎ着ける、というが契約書締結の実態である。交渉に何ヶ月もかかることも珍しくない。
日頃からお互いに契約書を盾に様々な交渉をしている場合も多い。
そんなものを「見直し」なんてあり得ない話である。

さらに我慢できないのでもう一つ。
この制度で問題なのは「経過措置」である。
経過措置、段階的適用というのは良いことであり、歓迎されることと思う人も多いだろう。
しかしそれは違う。

手書き書類でやっているのならまだ良い。しかしシステムで全てを管理している場合はその「経過措置にも対応、つまりソフトウェア変更」しなければならないのは当然である。単純にその対応のためコストが増えるは当然である。
また面倒なのは事業者によって対応が異なる、という点にある。つまり「振り分け」が必要となる。
一般的に例えば「2年だけの経過措置のための対応を盛り込む」というのは嫌がられる。つまりお金がかかる。普通は「2年後にまた再改修」のほうを勧められる。

そういった「実態」などまったく知らぬ存ぜぬで「正論を振りかざす」かのような言動をする財務省・国税庁には怒りを感じるのである。
よく「財務省が失われた40年の元凶」と言われる。いうまでもなく経済発展を阻害させたという意味であり、またこのインボイス制度によって失われた50年、60年の元凶になりかねい。

客観的に見てもインボイス制度関係のQ&Aは項目だけで50(ページ数で170)を越えるような膨大な量になっている。
それだけ難解であり、解釈がよくわからない条文がある「悪法」であるといえる。

最後に根本的な問題を指摘しておく

・消費税という名称がおかしい

これは散々論議されたり裁判で焦点となってきた。
消費税というのは誤りで単なる事業者課税の1つであって、付加価値税という、事業者が付加価値をつけた分についての課税に過ぎない。
ご存じの方も多いと思うが、そもそもが事業者税増税だと反対があまりにも強いので「消費税」という名称でごまかした。
そして消費者に堂々と転嫁して良い事業者税にしたというのが導入の経緯である。
今回のこの制度で一気に今までのおかしなところが噴出している。
ちなみに海外では「消費税」などと言っている国は皆無だ。日本の報道で「欧州は消費税20%を越え」云々も、これは消費税では無く付加価値税というのが正式な名称であり、マスコミもミスリードに加担していると言わざるを得ない。
なお、国税庁のホームページでは小汚く使い分けているので見てみると失笑レベルで面白い。

・事業者登録番号は撤回すべき

そもそもこんなものを設定している自体がおかしい。
買手が納税事業者か否かにかかわらずすべからく「みなし納税」にすべきである。

非納税事業者においては単純に「事業税免税」をしているだけだ。
「益税」という言葉を使う人もいるがこれは誤りであると裁判所で認定されている、という話は有名だ。
多分言っている人も分かっていながらミスリードを狙っているのだろう。
免税をしているのだからそれは「財務省持ち」になる話であって、それを事業者に押しつけているのは間違いである。

また、売り手により税率が軽減か通常かというのを明示するのが目的と言うが、これも本来は納税者を信じるべきである。
もし疑いがあるのならそれこそ「税務査察」でもやって詳細を突き詰めれば良いだけだろう。
自分が本来すべき仕事をやりたくないからといって民間に押しつけるのは省庁としては悪である。

 

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