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2023/05/19

梅村みずほ発言なんかより入管法改正問題が重要

維新の梅村みずほ氏の発言が大きな話題となっている。

氏のヒステリックな発言とともに、それに反発するヒステリックな反応も多く、なんとも嫌な気持ちになる。

本当に問題なのはどこなのか。氏の発言の妥当性は本来論議すべき問題からは遠い話である、ということが問題なのだ。
言い換えれば現在問題となっている場において、入管管理局の文書の真偽を問うこと自体が問題なのである。
別に管理局のレポートを全て信用できるという話ではない。
その真偽を追求すべきだ、というのであれば別の場所で徹底的にやるべきことだ。
「梅村氏の言うこともある意味理解できる」と擁護するのはまったくこの点を理解していない残念な人である。

氏が真偽を持ち出したのは国会の法務委員会。しかも国際的に問題となっている入管法の改正に関する論議の中である。
入管法改正案の是非に関わることであれば持ち出すことに妥当性があろうが、まったく感じられない。

詐病であったか、支援者の口添えに問題があったのか、ハンガーストライクであったのか否か、それらがどちらが真実であっても入管法改正案の是非のどこに関係あるのか私にはまったく理解ができない。
もしあるのなら、その点を説明すべきだし、擁護する(今は否定しているが)維新も説明すべきだし、マスコミも追求すべきだ。
その上でこの真偽を解明するべきだ、という論で進めなければ妥当性があるとは言い難い。
だから氏は「私の言うことには根拠がある」などとまだ言っているようだが「別のところでやれ」という話である。

ネットの中では「法改正議論の時間つぶしのためにこんな茶番を仕掛けた」という人もいる。
つまり「法案審議にきちんと時間をかけた」というアリバイづくりをして、(野党からしてみれば)問題のある法案をごり押しで通そうとしている、という論である。
なるほど、と思わざるを得ない。ゆ党と揶揄される維新だから、与党に与するのは当然という観点である。

マスコミや野党(立憲民主)は指摘していることだが、今回の法改正案は乱暴に過ぎる。

いうまでもなく今の難民認定の認定率は先進国比較であまりにも低すぎる。
言い訳をいくらしても無理がありすぎるし、いくら救済措置があるとごまかしても、現実として「難民認定率」という数字が低いのだからダメなのだ。いっそ数値目標を設定して無理にでも認定率を上げないと国際的にヤバイだろ、という状況にあるのではないのか(もちろんこれは乱暴で極端な言い方である)

今まではそれでも認定率が低くても却下されたら無限に申請できるから実質的に在住できるのでまだ救いがあったのだ。
もちろんそのやり方が良いとは私も思わない。
ところが改正案では回数制限を設定しているから強制送還されてしまう。
そこを変えるのならばそれと同時にやるべき制度改革と納得性の行く審査、この2つが重要となる。

殆どのマスコミでは報じられない話だが、ある番組で立憲民主の長妻氏の説明をざっくり言えば以下の通り。
まず問題なのは本質的に体制としての問題。
現在審査している機関は「規制」する機関だから、原則入国できなくするのは当然の業務。率が低いのも当然、というか低い方が業務評価が高くなって当然である。つまり、この点がダメ。
もちろん規制する機関の存在は必要だが、同時に入国を人道的に推進する機関も必要である。その設置を法的に担保し制度とすべき(つまり今回の改正案に同時に明記すべき)ということ。
これに与党は「第1次審査には第三者機関がある」といって拒否している。
当然だがこんなのはダメだと簡単に分かる。
あくまで入り口だけだし、審査自体に関与できないのだから、アリバイづくりでしかない。

もう一つの問題は、却下理由の非開示性である。
本人にすら十分な理由の説明がないのも問題だし、あまりに過剰で用意不能「難民となった理由、事実」を提示要求するというのが問題だ。
本人が「迫害・逮捕される可能性が十分にあり得る」と思い込んでいる”だけ”だとダメらしい。
例えば反政府活動をやっていて、一緒にやっていた友人と連絡がとれず、逮捕されたらしいと聞いたとしよう。そしてその友人より自分の方がよほど熱心に活動をしていたとしよう。当人にとっては紛れもない事実であり、自分もすぐにでも逮捕監禁されかねないと考えて当然なのだが、その事実を客観的証拠で証明しないとダメということらしい。既にその国を離れていて、その事実をなにかしらの客観的証拠と共に証明しろ、と言われたって一体どうやればできるのだろうか。この世の中にそんなことをできる人間が存在しうるのだろうか。

「なんであれ証拠(証明書)が出せないのなら認めるわけにはいかない。本国送還となって結果あなたが逮捕されようがこれは私の職務なんで」という人をあなたはどう思うだろうか。

問題なのはどのような事例がどれだけあってどのような実態なのかが不透明なことだ。
こういう開示というと「プライバシー保護ガー」と言い出してごまかす輩が必ず出てくる。
それならば却下理由を開示して良いかを本人の同意を取り、OKなら即開示、何十年後なら開示OKなどの同意書を取り付ければ良い。
おそらく却下通知とその理由をみて怒りや失望を覚える人が多いだろうからむしろ即開示を望む人が多いのではと推察できる。
だからこそ、こんな制度は絶対反対、という輩がプライバシー保護を振り回してくることは容易に想像できる。

もしくは個人情報のうち住所・氏名、詳細日時などは伏せて、いわゆるビッグデータレベルで統計のみを開示するという手段もある。
詳細情報はそれはそれで保存するのは当然だ。仮に本国送還して不当逮捕、監禁などの状況があった場合は詳細情報とリンクさせてトレースすべきである。(もちろん行政側は瑕疵を追求されるのは嫌だから自民党議員を使って抵抗するのは当然だろう)

こういうことも法的整備によって制度として担保すべきである、ということだ。
当然ながらこれらも行政側としては百害あって一利なしだから与党は拒否している。

この辺は私の意見感覚では立憲民主党の言い分は納得がいくものなのだが、それが正しいかはもちろん分からない。

だからこそ法務委員会では論議・法案の審議をすべきなのであって、「梅村問題」なんかさっさと排除して本来の議論に進むべきなのだ。

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