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2017/09/30

保守とかリベラルとは一体何?

最近の政情でいちばん意味不明なのは「保守派」「リベラル派」という言葉。
マスコミを始め、ここ十年くらいで特に誤用が目立っているらしく、自民党(特に安倍総理)も訳が分からないし、とどめが小池百合子氏の「改革保守」ではないでしょうか。

ある評論家がゲストを招いていた場で解説があって「なるほど」と思ったので紹介しておきたいと思います。

まずは基本

「保守」というのは「保つ・守る」であり、維持するという意味合いが強い。
鉄道に多様詳しい人なら「線路を保守する」という言葉が浮かぶのでは無かろうか。
勝手に自己判断で線路の材質やら幅やら枕木の本数を変えたら大惨事になりかねないわけで、愚直に同じ状態を保ち続けるのがその仕事となります。

つまり、「保守」にとっては「変革」「改革」という言葉は対極にあるもので、それを政策に入れたりというのは全く理解に苦しむことなのです。
いわんや「改憲」などと言うのは根幹を変えることで「保守政党」が「改憲が党是」と言う事自体が理解に苦しむ、というのが普通の感覚なのです。

一方「リベラル」というのは「自由」であり、変革、改革、革新など、従来のものをなにものにもとらわれずに自由に見直すというのがその本質的立場のはずです。
リベラルが「護憲」であるわけがなく、検討の結果として変更しないとしても、検討に応じないという姿勢はリベラルとしては失格ではないでしょうか。
ただ常日頃から全項目を自分の中で検討してみて、現状がベストである、という認識の元に「護憲である」というのはリベラルとしては問題ないとは言えます。

掘り下げレベル1

さて、この2つをもう少し掘り下げます。
「保守」というのは、「現状がベストの状態である、なぜなら過去からの失敗や成功の積み重ねがあって今があるからだ。私のような浅はかな考えで安易に変えるべきでは無い」という姿勢ということです。
これには宗教観が入ってくることもあります。例えば「聖書ではこういう教えがあるから、この法律は良いものだ」という価値観も含みます。

「リベラル」というのは「ベストということはない。常に時代は変化し、価値観も変化するから常に見直し、ベストを保つべきだ」「変更するときは過去に囚われず、自分の価値観や理性を信じ、最適なものを導き出すべきだ」という姿勢です。

保守は自分の知見よりも過去の積み重ねを信じ、リベラルは積み重ねよりも自分の知見を信じる、ということが大きな違いである、ということです。

この2つはどちらが良い悪いでは無く、個々人の“価値観”の相違と感じます。
だからこそ、米国ではこの2つが拮抗し、二大政党として体現されていると言えます。

掘り下げレベル2

ここから私見が多分に入ってきます。

「保守」なのになぜ「自民党は改憲を是とする」のでしょうか。

それは「今が壊れた状態であり、元に戻すべきだ」と考えているとすれば納得がいきます。
“元”とは何でしょうか。
これは自民党の改憲草案を見ると理解しやすいと思います。
ある程度の知識のある人が見れば「まるで日本帝国憲法(明治憲法)」と感じるのではないでしょうか。
安倍総理の言う「美しいニッポン」やら、道徳の教科書検定の関係やらを見ると、「戦前の日本」を見ていると感じるでしょう。
つまり「戦前の日本」が「あるべき、守るべき姿」であり、その根幹である「日本帝国憲法」と考えられます。

今の憲法はその理念や価値観が“壊された状態”であり、保守によって“元に直す”べきだ、という観点と考えると納得がいきます。
これが「自民党の改憲」の本質と考えるの自然です。
これはいわゆる「占領軍による押しつけ憲法論」とも共通します。

つまり「日本帝国憲法(に近い状態」)が“守る”べきものであり、それに向かって補修していくのが自民党の言う「改憲」である、ということです。

自民党議員のすべてがそこまで“酷い”とは思いませんが、党内検討の結果として草案が出ているのですから、“自民党の意思”と取らざるを得ません。
「安倍総理のもとの改憲には応じない」という野党の言い方がマスコミによっては揶揄されますが、この観点が特に強いのが安倍総理ですから、その観点では少なくとも明治憲法を強く否定する野党の言うことも理解出来る、ということにはなります。

同様に共産党が「保守」なのも同様の観点で考えれば理屈が合います。
「共産革命」が前提なのだから「保守」はおかしいという論もありますが、彼らにしてみれば「共産国家」があるべき姿なのでそこに向かって「保守」を続けるということです。

いずれも「現状を是としての保守」ではないことを意識すべきであると言えます。
これは希望の党の「改革保守」も同じで、小池氏の理想(政治)世界への「保守」をしていると考えた方が正しいとらえ方なのでしょう。
さすがに戦前体制復活ではないですが、一院制など現状維持とは大きく違います。
もはや私には推測は出来ても、理解できないレベルですが。

それにしても「現状を是とする保守」をする保守政党というのはなぜ日本にはないのでしょうか。残念すぎることです。
むしろ民社党の保守勢力がむしろ本来としての保守政党に近い(過去形か?)というのも皮肉な話です。
おそらくは日本人の殆どが「保守政党」という言葉に騙されて「保守だから自民党に」という事を考えてしまっているのではと思われます(マスコミも同じですが)。

一方の、リベラルについても掘り下げてみます。

特に昨今、リベラルという言葉がどんどん“悪口”になっている気がしています。

「しがらみのない」「改革」「リセット」などはどれもリベラルそのものです。
しかし、小池百合子氏が今回「改革保守」などと言う意味不明の言葉を使ったのは、リベラルという言葉の持つ、現在の日本で支配的な悪いイメージを嫌ったからでしょう。
(言葉の「イメージ」を熟知し操るのは氏の強力な武器であるのは言うまでも無いです)

先に述べたように「小池ワールド」を理想して持っている方なのですから、これは正にリベラルの姿勢そのものです。(別にこれは揶揄しているわけではなく、褒め言葉です。なかなかできることではない希有な存在で、だからこそ多くの人が惹かれるのでしょう。安倍総理も「安倍ワールド」がありますが、これはナニカに縛られている陳腐で視野の狭い世界にしか見えず、私は面白みを感じません)
リベラルとは自らの理性や理念を信じてそれに向けて進むことを是としていますから、小池氏は生粋のリベラリストと言えます。(新党を次々に立ち上げたのもその表現の1つです)

リベラル政治が失敗してきた要因は、1つは“保守が仕事”である官僚とそりが合わないことでしょう。
官僚は法律に沿っての仕事が原則ですから、リベラルが異端であるのは当然です。
まず、ここの自覚が足りないように思えます。
リベラルな発想を法律にして、それに従わせるのが政治家の仕事、という発想に乏しいのでは、ということです。
もう1つは発想がリベラル(自由)過ぎて実現可能性が無く、また根拠や理論性や整合性が乏しく、実現できなかった、ということでしょう。
最近は二言目には「財源は?」といって発想を叩くのが定番化しており、それはさすがに辟易としているのですが、それはともかく、キチンとしたデータに基づき、ある程度は勘定しておかねばなりません。
本来はリベラルというは理論性や自分の価値観がしっかりないとダメなのですが、世間でリベラルと呼ばれるにも関わらず、それらが欠けているのが問題なのでしょう。
これはマスコミのレッテル貼りの基準がおかしいというところもあるように思います。
保守じゃ無いからリベラルぐらいだったり、じゃあ、保守がなにかというと基準がいい加減だったり。

保守・リベラルは政治的な観点と言うより、その人の価値観や姿勢に根付いたものだと思います。

私自身については、ぼんやりと保守だと思っていたのですが、この観点から見ると、どうも日頃の発想からして「リベラル」であるようです。
冷静に周囲と比較すると、どうやら、あまり前例を参考にせずに、理論や知見から一から作り直してしまう傾向があるからです。
数学のテストでいうと、回答手法を網羅的に記憶せずに(というか出来ない)、最低限の公式や理論を徹底的に叩き込み、それを応用することで回答を得る、という手法です。
それすらもきついので公式・理論も「イメージで捉える」「なるべく他の事象との繋がりで捉える」癖がついています。
私の記憶力が人並み外れて悪いためにやっていることなのですが、それが「リベラル的姿勢」を育んだようです。
一方で、殆どの人は頑張って塾等で反復を必死に網羅的に覚えてテスト等に対応しているらしいです。(私はそういうのがダメだったし、そもそも塾等に行くような経済的余裕が無かっただけともいえます)

「前と同じだからこれでいいんだ」という前例主義は「保守」です。
会社には結構そういう人が多いようです。
もっとも何も考えていないで“コピペ”しているだけの人も見受けます。
生粋の保守の方(?)からすると消極的保守ともいえるのかもしれません。

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