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2017/08/05

「省エネ性能カタログ」にみるエネルギー政策問題

経産相が発行する「省エネ性能カタログ」というものをご存じでしょうか。
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/more/
これは一般家庭向けに、電化製品を買うときの参考にして欲しい情報を提供しているもの、一般向けのカタログ雑誌です。

家庭用電化製品の省エネに関する様々なデータが載っているのですが、ある一定の知識を持つ人が読むと違和感を感じると思います。

ある意味、とても興味深いものです。これは「問題も多いので注意」という意味です。
載っているデータはもちろん正しいのでしょうが、そこから巧みにおかしな見解、解釈に誘導しているようにしか見えない部分が多々あると言うことです。
しかし一方でデータを読み解くと「一般的に言われていることは違うのでは無いのか?」という気付きにもなるのも事実です。

上記のリンク先にある2017年度版を参考にして話をしていきたいと思いますので興味のある方がダウンロードして参照しながらご覧下さい。
なお、この記事中で特に言及をしていないグラフはこの省エネカタログからの転載(抜粋)であることをここで明記しておきます。ご了承ください。

まず2ページ目から、ツッコミどころ満載でどこから突っ込んでいいものやら、という感じしかしません。
特に「画面のおそうじをしましょう」はむしろ反対です。画面が汚いと暗くなるからという理屈らしいですが、正直よほど酷い家庭でも画面が暗くなるほど汚いことはありえません。
むやみに画面を拭いたりするほうが画面の劣化を進めてしまいます。
特に単なるぞうきん、しかもぬれていたりすると故障の原因となります。

そもそもそこまで酷いくなるのなら「まず部屋の掃除をしろ」「テレビの周りをきちんと掃除しろ」です。

昔のブラウン管テレビは原理的に電気をいれたり切ったりすることで静電気が発生するため周囲のホコリを吸い付け画面がすぐに真っ黒になりました。
しかし液晶テレビでは原理的に皆無です。普通の壁と同じような話で、壁が汚れていないレベルならテレビの画面も汚れていません。
問題なのはテレビの台がホコリだらけの場合で、そのホコリをテレビが吸い上げて中に溜まり、壊れる要因となることです。まずはそこをきちんと掃除しましょう。

つまりこれは「時代錯誤の感覚でものを言っている」としか思えないのです。
こういう点はこのカタログ本編のあちこちに見られます。
ひとえに担当者の勉強不足および役所の悪しき前例主義の結果であり、非科学的・根拠なき前例だけでものを言っているとしか思えず、それは極めて害悪ですらあります。

ただ、すべてが間違いではなくエアコンのフィルター掃除についてはその通りです。
フィルターは周囲の空気を吸い込んでいるわけで、その時にホコリを吸い付けています。
これは簡易的な空気清浄機とすらいえます。
またエアコンの売り文句の一つである「部屋中の空気を循環させている」のなら、部屋中の空気をかき集めてそこからホコリを濾しているのです。
日頃こまめに部屋の掃除をしていてもけっこう“集められて”います。

これを詰まらせてしまうと空気の吸い込みが悪くなり、吐き出す空気の量も減り、冷暖房の効果が悪くなり、結果としてより強く動作するようになり、電気を余計に食います。
またカビ等の温床にもなり、部屋中にバイ菌をばらまく原因となりがちという健康面でも問題があります。

壊れたかと思って修理を依頼されたが実はフィルターがホコリやカビびっしりで目詰まりしていただけ、というのはよくあることのようです。
本当かどうか知りませんが、修理店によっては「なんか最近調子が悪い」という問い合わせの時は予めクリーニング一式も持って行っているという話も聞きます。まあ、掃除の出張対応に主旨が変わるだけなのでどっちで呼ばれたとしても構わないという面もあるようですが。お客さんにしてみれば“エアコンの不調”という意味では同じですし。

さて、余談が長くなりましたが、5ページにいきます。
Photo
このグラフは興味深いです。よく「東日本大震災以降省エネ機運が高まった」と言われるのですがこのグラフからは違うように見えます。
右肩上がりはいうまでもなく高度成長時代、バブル時代で、落ち着いてきたのが1995年あたり。
バブルがはじけて、あぶく銭も尽き、皆が落ち着いてきた頃ではないでしょうか。
「失われた20年」のはじまりになります。

落下しはじめたのは2007年「リーマンショック」が契機とみるのが常識的でしょう。
会社自体の落ち込み、工場操業の低下もあります。リーマンショックの直接影響もあるでしょうし、それ以前からの円安が重しとなっており、輸出製品を作ってきた工場が次々に海外移転に踏み切らざるを得なくなった時期でもあります。
工場がなくなれば、操業による消費電力も0になります。

2010年で一度持ち直そうとしましたが、そこに大震災が来た、というように見えます。
茶番ではありましたが実際問題として「東京都心を含めた輪番停電ショック」も少なからずあったと思われます。
これは環境団体が時々呼びかける「電気を消して生活を見つめ直そう」キャンペーンの強制版と言えます。
「意外と電気が無くても暮らせるんだ」と思ってしまうことで、悪いことでは無いとは思いますが、消費電力の低下にも寄与しますし、景気という意味では悪化させることになります。

また雇用の悪化・平均賃金の低下があり、家庭でも電気代の倹約に走るのは当然のことであり、省エネ意識は環境問題と言うよりも月々の電気代を減らして家計を助ける、という短期的目標となって当然のことでしょう。
アベノミクスで景気が上向いても消費は増えていないですから、電気代の引き締めが変わるわけもありません。省エネ家電はそのウリになるのは当然です。
自動車も省エネ、つまり維持費が安いということにつきます。
実際に現在は軽自動車(車検が安い)かエコカー(燃料費が安い)しか売れない、という市場になっています。

さて、家庭単位で見てみましょう。
40年以上前の大昔との比較です。
2
「冷房」と「動力・照明ほか」に赤字が書いてあります。
これは何の意味があるのでしょうか。
というか、冷房がわずか2%ということに違和感を持ちます。
エアコンが相当普及しているはずの現代で、そんなに使っていないのでしょうか。

一方でそもそも「動力」とは何か、という不可思議さがありますが、どうやら自家用車などのことのようです。
「ほか」を含めて数十%もあるような分類をする自体が疑わしいのですが。

これらを考える上でもう一つ重要なデータが同ページにあります。
「わが国の主要耐久消費財などの普及率」とあるデータです。
3
乗用車は75年で40%、近年で80%くらい、つまり2倍になっています。
燃費が良くなった、エコカーが売れている、といっても市中を走るクルマをみるとまだ入れ替わっているとは言い難く、さほど燃費の良くは無い軽自動車が走っているケースも多々あります。
増えた分燃費が良くなって相殺している、とまでは考えがたいものがあります。
つまりは自動車の数が増えたことにより増加が大きいと考えるのが妥当でしょう。
これは個々の家庭が裕福になったというより、地方の過疎化、国鉄民営化を含めて公共交通の減退が進み、地方がより個々の家庭が持つ自動車に依存せざるを得ない社会になってしまったという面が大きいでしょう。

「照明ほか」というのはテレビや冷蔵庫、パソコンもこれに含まれると見られます。
このこと自体が家電製品(エアコンを除く)の消費電力などは「家庭におけるエネルギー消費」という観点からは“ほか=些細なもの”なのと語ってしまっています。

つまりこのデータによってこの冊子の意義「家庭用電化製品の省エネ性能を考える」ということを自己否定してしまっているわけなのですがどういうつもりなのでしょうか(笑)

もエアコンは75年でわずか20%足らず、近年で80%ですから4~5倍にも数が膨らんでいます。一方で冷房では1.3%から2.0%と1.5倍程度です。
それだけ「買ったはいいが使われていない」のか(まあ、実家でもそうなので否定出来ません)、よほど効率・性能が良くなったのかということでしょう。
40年前のエアコンというのはオンにすると冷房が噴き出しオフにすると止まるというレベルでエアコン(空気をコントロールする)というより単なる冷房機でした。

昨今のエアコンはまさしく空気をコントロール(制御)するにふさわしい性能・機能を備えており、もはや「冷房が贅沢」ではなく、暖房も灯油方式よりも実質コストが安いといわれるほどになってもう久しいです。(室外機の効率は外気温によるため冷寒地はまだまだというところはあります)

ところでこの円グラフをみても意義があるとは到底思えません。
仕方が無いので円グラフの数字を拾ってExcelでグラフ化してみました。
随分と見える景色が違います。
4
いかに冷房によるエネルギー消費が少ないか、ということが分かります。
ちょっとエアコンを使うと「もったいない」とか言う人がいますが、仮に倍にしても大した影響はありません。
むしろ暖房や給湯によるエネルギー消費が突出しているのがよくわかります。
給湯というのは風呂やシャワーでしょうが、ここの効率が悪いということです。
また給湯が変わっていないことが目立ちます。原理的に効率は上がらないでしょうし、節約と言っても大差ないのでしょう。
冷房を半分にするより、冬の暖房や給湯を数%ケチった方がよっぽど効率が良いのです。
また、ここに「革命」が起きると格段に数字が改善されることがわかります。

暖房については多いと言ってもこれは全国平均であり、北海道や東北の暖房量はハンパないですからそれらの数字が思いっきり数字を押し上げている可能性も考えられます。
そうするとこの意味自体がなんであろうか、という話になります。

「そのほか」については「自動車と(冷暖房を除く)家電が含まれ、それは倍加している」ということは言えます。
確かに自動車は倍増しているのです。一方でこの間の自動車の燃費の動きも非常に分かりづらいのです。つまり差し引いた家電がどうなのかということは不明瞭です。

この冊子は「家電の消費電力」を扱っているはずにも関わらず、その推移が実際は見えない情報を提供しているという不可解なものなのです。
普及率グラフを出して家電が増加していることを言いたいのでしょうが、それはミスリードです。
全体数量が倍になっても、消費電力は半分以下になっている、そんな家電はいくらでもあります。

で、結局、なにがなんだか訳が分からなくなったと思います。

何が言いたいのかと言えば「経産省はこのような意味の無いデータを吐いてどうしたいのか?」ということなのです。
そして問題なのは「こんなものが税金を使って作られている」という紛れもない事実なのです。

「よくわからないけど、節電をしないといけないってことなのかなあ?」などというミスリードを狙っているとしたらとんでもないことです。
誤った知識で混乱させ、印象操作をしているだけであり、問題ではないでしょうか。
こういう“トリック”に対する不信が「原発問題」にも繋がっているというのは、うがった見方なのでしょうか。

さらに次の7ページではもっと些細な話に展開、ミスリードをしており呆れてしまうのですがそれは次の記事に続きます。

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