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2016/12/10

風邪の流行:「体調管理」とは個人の問題だけなのか

「体調管理」は個々の問題だけなのか

インフルエンザや風邪が例年のように流行っているようだ。
よく個々の「体調管理」とかいう言葉で片付けられる。
まあ、マスコミが言う場合は生活環境全般(もちろん会社など)も入る。
しかし会社がいうのを聞くと「無責任極まりない発言」と感じてしまう。
もちろん個人の“体調管理”もあるが、環境の整備ができていない(責任を果たしていない)のに個人の責任に押しつけている面も多分にあるからだ。
要は会社側が何もしていない例が殆どではないか。

なぜ風邪をひくのか

大雑把に言えばインフルエンザや風邪(というか多くの感染症)は

その人の免疫力<病原菌の感染力

となったときに発症すると考えられる。
菌(ウィルス)はどこにでも存在しているし体内に入ってくる。
それを免疫力で無効化するから健康でいられる。
しかし物理的に濃度が高かったり、活性力が高ければ感染しやすくなる。

免疫力は個々人に依存することは多い。そこは個人の問題である。
しかし感染力を“制御”するのは会社側の“労働環境”によるものだからだ。
具体的に言えば“湿度制御”である。

湿度管理の重要さ

濃度については換気?とか思うが、もちろんそれもあるが両方とも湿度に大きく関わっていることが知られている。
インフルエンザウィルスは湿度が低いほど活性化してしまい、逆に高ければかなり不活性化してしまう。これは感染力に関係する。
また、空中を浮遊するものも湿度が高いと水分がウィルスの周りに付着し、重くなって落ちやすくなる。

湿度が低いと喉の粘膜などが炎症傾向になり、免疫力が低下する。
これは誰しも経験することだろう。(免疫力までは体感ないだろうが)
繰り返すが、あるなしのデジタル的な話ではなく、ある閾値を超えると発症がみられるものであって、その発症の軽重も当然ある。

労働環境として湿度管理はされているのか

検索してみると、湿度の管理というのが会社でされているかについての調査があった。

冬季のオフィス環境における低湿度の実態と対策について

ポイントは二つ
・湿度管理は努力義務だがある。40~70%と数値も提示されている
・湿度管理はほとんどの事務所で実施されていない様子
ということである。
ここで「事務所」となるが、職場と言っても屋外や工場などば別の話となるのだろう。

温度管理をきちんとしている会社は多いと思うが(流石に寒い暑いは労働環境として判りやすいからだろう)、湿度管理も法律で決まっていることを知らない人は多いようだ。
実際に私の勤務している会社でも、過去に一度“湿度管理”について上司に問うたが「いや、湿度は管理に入っていないのでは」「少なくともやっていないなあ」という回答だった。
付け加えるのならば、その上司は会社の中で部門の“労働安全衛生”の“委員”であり、むしろ詳しくなければならない立場の方、である。

念のため法文も確認しておこう。
事務所衛生基準規則
第五条三項
3  事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。

冷え性も湿度の問題=労働環境では

もう一つ、湿度が低いと起こる問題がある。
それは“冷え性”である。
湿度が低いと皮膚から水分が蒸発しやすくなる。
冬場は洗濯物が乾きやすい、干し物を作るのに適している等からも容易に理解できるだろう。
水分が蒸発すると気化熱を奪う、つまり皮膚の温度を下げてしまう。アルコール消毒で一気に奪うと冷たく感じるのと同じ事である。
温度自体が低かったり、床が気温に比較し温度が低いということもあるが、湿度が低いから冷えるという側面もあるのではないか。
手先が冷えたり、多くの女性で足が冷えるというのはこれが空気にさらされる皮膚で起きるからだ。
多少寒くてもズボンをはくような工場では冷え性が起こりづらく、スカート着用とされる事務系では起こりやすいのはこのせいと考えるのが妥当と思われる。
そしてこの“冷え性”も体に負荷が掛かるから、免疫力の低下を招く。

冬の脱水症

また、水分が蒸発するということは冬場でも脱水症状になりやすくなっている。
当人には汗をかいたような自覚は無いのだが、思う以上に体から水分が奪われているのだ。
水分が奪われることは様々な疾患の要因となるし、自覚がわかりやすいものでは粘膜・粘液の分泌低下を招き、炎症を起こすなど、免疫力の低下につながる。

湿度の低下は様々な側面で体の抵抗力を奪ってしまう。
またウィルスを元気にしてしまう。
これがインフルエンザや風邪が流行するメカニズムの一つではなかろうか。

労働環境軽視

個々人でできることはあるが、会社側もやることがある。
法令で努力義務とされており、軽視する傾向ではあるのだが、しかし努力もしていないのは法令違反ともいえる。
(努力としているのはやらなくてもいい、という意味ではない。どんなに頑張ってもすべての場所で40%というのは結構難しい。空気の循環も考えないといけないからだ。だから努力義務としているととらえるべきではないのか。)

日本ではこういう労働環境というのは軽視されていると言わざるを得ない。
高度成長時代は人間軽視とならざるを得ないが、真の「先進国」成熟国になるには人間軽視論理は払拭される必要がある。
「働き方改革」などという論議も結構だが、今ある法令をまずは徹底することも重要ではないのか。
その改革で大きな課題とされる労働時間が典型例だ。無給時間外労働(いわゆる「サービス残業」)等は“奴隷禁止”という法令すら想定しない悪事である。不正会計という側面もある。
そのくらいの意識でやっていかないとダメだろう。
時間制限やらインターバルやら細かい点をいくら見直しても従わなくては無意味だろう。

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